<   2010年 09月 ( 29 )   > この月の画像一覧

◎鳶口桐比古
元津川学院大学医学部医学科遺伝子専攻教授。遺伝子研究の一人者で、特に生命の起源や進化の分野に力を入れていた。生命科学全般に広く精通しており、また、元々が外科医であることから司法解剖を請け負っていた。自らの研究を重視し、執刀の現場からはメスを置いている。

6年前に大学を辞めており、以来彼の消息は不明である。現在は自分の研究の為、闇医者家業を生業として津川町の闇の世界に身を置く。

・津川学院大学
鳶口の情報は主に津川学院大学内で入手することが出来る。

①研究室
鳶口ゼミは遺伝子研究を主とし、機材を用いて動物や植物、細菌等広く遺伝データを集めていた。専門的な機材が揃った研究室は鳶口が大学を去った後も他の研究者たちによって存続している。

研究室には鳶口から直接指導を受けた者も何人か居り、話を聞くことが出来る。但し、彼らの語る鳶口のここでの研究や講義は一般的な範囲のものであり、なんら不審な点は無い。これは研究室や大学に残る彼の研究資料も同様で、ウィルクスランド症候群など稀な症例を扱ったものもあるが特におかしな点は認められない。人物像に関してはあまり人付き合いを好まないのか学問以外での会話は無く取っ付き難い感じはあるが、指導は適切で授業内容も的を射たものであった。淡々と機械的に業務をこなしている印象で、プライベートを知る者は居ない。

⇒機材
研究室にある機材の多くはBDDP社から大学に寄贈されたものである。6年前当時、鳶口の研究にBDDP社が多額の資金援助をしていた。この情報は大学の経理を当たれば簡単に判明する。

②失踪
6年前の8月末日付けで鳶口は大学を辞職している。7月15日に鳶口本人から学部長に退職願が郵送で届き、以来、鳶口は一度も大学に姿を現さなかった。突然のことでそれまで教鞭を振るっていた鳶口の様子に変わりは無く、退職願の辞める理由は一身上の都合とだけあった。退職願が提出されて間も無く鳶口の住んでいたマンションの一室は引き払われており、本人から退職願の受理に関する確認の電話が一度あったきり一切連絡は取れていない。大学にその後の彼の消息を知る者は居ない。

⇒黒い噂
鳶口の辞職に関して妙な噂があった。6年前当時、鳶口は研究資金を得るため暴力団関係者に正規外の医療行為をし多額の謝礼を受け取っていたというもの。これは、研究室に多くの機材を導入していることへの不審から出たものと鳶口の周りの者(研究室の者など)は見ている。しかし、鳶口がヤクザ紛いの形をした輩と居る目撃談もいくつかあり、彼のプライベートが隠れたものであったことも相まって、辞職はヤクザ絡みであったのではないかと実しやかに囁かれた。
[PR]
◎青薙組
津川町の地元指定暴力団。近年は台湾マフィアと繋がり、関西圏に勢力を拡大しつつある。

・仕事
シナリオに関係する青薙組構成員の行動は以下の通りである。主に末次達郎の指示だが、末端の者は意味を理解せず違法行為を行っている。

①シマの監視
仕切っている風俗店などで客と揉め事が起きた際に迅速に(主に暴力で)対応する。繁華街を中心に複数の拠点を置き、常にシマ内に目を光らせている。
この仕事は下っ端が多く、組の内情にはあまり詳しくない。但し、取り扱う売春婦に近年、東南アジア系の人材が急速に増えたことは当然知っているし、それらの人材がアルコルワークスから裏ルートで紹介されていることに気が付いている者も居る。

②ミザールのバウンサー
シマの店の用心棒は主に下っ端の仕事だが、中でも腕っ節の強い者がミザールという店に当てられている。ミザールは末次達郎が経営する高級クラブ。地下に闇医者の鳶口桐比古の診療所があり、店の厄介ごとを請け負うというよりも鳶口の警護と彼の元を訪れる者のチェックが任務である。

⇒6年前の外国人
ここで長く従事している者は、6年前に鳶口の元にある女性が連れて来られたことを知っている。台湾マフィアの連中が連れて来た女性で、自分達のシマの店でホステスをしているのを何度か見かけたことのある外国人…東南アジア系の顔なのにどことなく西欧風な感じがしたことから印象に残っていた…であった。組からは台湾マフィアの指示に従えとしか言われず、女性の素性、鳶口との関係など一切知らされなかった。その後、女性が鳶口の部屋から出てきたところを見た者はいない。

③地上げ屋
立ち退きを拒否する者を強引な手段を使って排除する。牧立建設の受注場所での仕事が主で、開発地での仕事が多い。現在は開発地でのトラブルの処理も行っている。

・末次達郎
青薙組と台湾マフィアを結び付けているのは末次達郎であり、末次大寅の部下がそのまま彼に従っている。末次は青薙組構成員では無いが、現在では組に大きな影響を与えており幹部と同等の地位にある。末次は実業家としての顔を持っており、青薙組との関係が表沙汰にならないように行動に注意を払っている。末次の目的を知るのは青薙組内では彼に近しい者(兄大寅の元側近など)しかおらず、構成員の多くは末次を元幹部の弟で台湾マフィアに顔が利く人物という認識でしかない。

⇒末次大寅の死
末次達郎の実兄で青薙組幹部であった末次大寅は、6年前の8月8日に死亡している。死因は心不全。死亡以前、末次大寅に心臓その他の疾患は一切無く、年一回の定期健診の結果も概ね良好なものだった。

末次大寅は事務所で突然胸を押さえ倒れ、そのまま息を引き取った。事務所に居た複数の青薙組構成員がこの時の様子を目撃している。
大寅は死の二日前から妙な出来事が原因で眠れないと側近に話していた。眠ろうとすると枕元で経を読むような声がするという。しかし、自分の身の回りでそのような音を発するものは無く、原因はわからなかった。死の直前、大寅が「またあの声だ」と漏らしたのを近くに居た者が聞いている。

⇒報復
6年前の駿河黄道襲撃を指示したのは末次である。末次はどういうわけか兄の死の原因を日本語学校経営者の駿河の仕業と決め付けていた。当時、青薙組上層部に末次から駿河を殺害する旨の相談があり、実行犯として浪川平次郎を用立てた。借金塗れでヤク漬けの浪川は青薙組の完全な傀儡で、本人には犯行の目的どころか末次の名前すら知らされていなかった。


◎七星の番人
アルクトゥルスと呼ばれる台湾マフィア。幹部は体に北斗七星の刺青がある。古くからある組織で台湾ではかなりの勢力を誇る。裏稼業の他、一般企業の経営や福祉活動への資金援助などを通じ政財界にも影響力を及ぼしている。世界各地に拠点を置く。日本では幹部の一人である末次達郎の手引きの下、関西圏に進出し暴力団組織に武器の提供や東南アジア系人材の斡旋(主に違法風俗)などを主体に活動している。

・メンバー
現在、末次達郎の下には10名のメンバーが彼に従っている。アルクトゥルスの掟は秘密の遵守でありこれに背いた者は死を持って償わされる。彼らはそのことを肝に銘じており、仲間を裏切ったり秘密を漏らすことは絶対に無い。上司である末次の命令のみを忠実にこなす。
必ず2名は末次の側にボディガードとしており、残りのメンバーは普段はアルコルワークス社の社屋で待機している。


◎BDDP社
米国の臓器バンク。臓器ドナー登録の斡旋と医療現場への臓器の提供の他、保険事業、医療器具・薬品の販売、医療関係の施設や学校などの運営等、事業内容は広域に及ぶ。本社はボストンにある。
経営者はテレーズ・ユンツト、78歳のゲルマン系アメリカ人。医療福祉の分野で有名な人物で、アフリカや東南アジアなどの貧困地帯への物資提供や施設の建設などに尽力している人格者として知られる。

・アルクトゥルス
BDDP社の関連団体に東南アジア方面の貧困地帯の支援を目的にした福祉団体がある。団体のリーダーは「呉聖明」という人物で、七星の番人の幹部の一人メグレズの名を持つ「陣志傑」と同一人物である。福祉を謳っているが、実際には団体とBDDP社間で多額の金が行き来している。

※アプローチ
BDDP社とアルクトゥルスの関係を知る人物は末次達郎とその側近(七星の番人のメンバー)のみである。彼らからこの事実を聞き出すのはほぼ不可能である。しかし、アルコルワークスの裏帳簿にはBDDP社と呉聖明との間での多額な金の行来が記されているし、裏社会の情報通は呉聖明がメグレズこと陣志傑であることを知っている。
[PR]
◎末次達郎
京都を中心にナイトクラブなどを経営する企業家。ナイトワークへの斡旋を主として行う人材派遣会社「アルコルワークス」の社長を勤める。識者として牧立開発の特別行政対策委員会の役員でもある。
青薙組幹部であった末次大寅の実弟。
末次は普段はアルコルワークスの社屋(津川町、元はランゲージスクール・スルガであったビル)を拠点にしている。彼の周りには常に七星の番人のメンバー2名がボディガードとして付いている。

彼はアルクトゥルスの一員で、幹部の一角として「アルコル」の称号を持つ。彼の左肩にはメンバーの証である北斗七星の刺青がある。青薙組幹部を兄に持ち、組と台湾マフィアの橋渡し役を担う。武器や売春婦の提供など二つの組織は蜜月の関係にある。

末次は自分の利益を最優先に考える人物である。極貧の家庭に育ち、生活に窮するが故に少年時代から盗みをはじめ様々な犯罪に手を染めた。台湾マフィアの一員となったのは彼にとってどん底から成り上がる限られた選択肢であった。兄である大寅を亡くした(別項目参照)ことは貧しい時分を共有した者を失った深い悲しみであったと同時に、兄に代わり青薙組幹部の空席を埋める大きなチャンスであった。現在、大寅が仕切っていたシマは事実上彼が管理している。

自分の所属する組織が裏切りを許さないことを十分に理解しており、決してアルクトゥルスの情報を漏らしたりはしない。また、配下の者の裏切りを絶対に許さず、秘密をばらした者には容赦なく死の制裁を与える。青薙組構成員の下っ端などから情報を入手することは可能だが、そういった密告者は二度と探索者の前に現れることは無いだろう。
末次は探索者が自分の利益を邪魔する存在と認めた場合、青薙組構成員を使い排除しようとする。詳細はキーパーに委ねるが、拳銃を持ったチンピラ(いわゆる鉄砲玉)に探索者を襲わせるなどオーソドックスな手段を取らせても良いし、警告として密告者の無残な姿を探索者に見せても良い。

普段は企業家としての顔を持っており、新進気鋭の切れ者社長として相応な素振りを見せる。物腰は穏やかだが、時折冷淡な表情を見せたりどことなく達観した印象を受ける(これは彼が死線を潜り抜けてきた為である)。

※6年前の真相
自動車工場誘致に伴う宅地造成計画の情報を掴んでいた末次は、担当業者の一つであった牧立開発の乗っ取りを企てた。自分の息が掛かった女である美都子を牧立滋に近付け誘惑させた。その後、配下の者を使い牧立絵理を事故に見せかけ殺害し、美都子を滋の後妻にすることに成功した。アルクトゥルス傘下のBDDP社に指示し絵留への臓器提供を申し出させ、滋の信頼を確固たるものにした。この際、緊急に臓器を手に入れる必要性から、水商売へ斡旋した(売春紛いなこともさせていた)ランゲージスクール・スルガの留学生「ヘレナ・ポドルスキー」を殺害し内臓を取り出した。当時、末次は宅地造成計画圏内の土地を保有する駿河黄道に近付く為に彼の学校の留学生にナイトワークを紹介し、駿河に金が入るような仕組みを取り計らっていた。ヘレナの留学生仲間が彼女が複数の男達に拉致されるところを目撃しておりその中に青薙組構成員(末次達郎の側近)が居たことから、それを伝え知った駿河は激怒しシマを仕切る青薙組幹部、末次大寅を呪殺した。駿河に妙な力があることを知っていた末次は実兄の不審死が駿河によるものと気付き、浪川平次郎に駿河を殺させた。
[PR]
◎アウグスティナ・ニー・リーリャン
事故死したアウグスティナ・ニー・リーリャンについて津川町で水商売や、不法な商売(売春など)をしている者達などから得られる情報。こういった裏社会での情報収集は危険と隣りあわせであり、目立った行動をする探索者には青薙組や台湾マフィアの構成員が対処に当たる。

・売春宿
アウグスティナ・ニー・リーリャンはアンジェラと名を偽り津川町でホテルなどに出張し性的行為を行う売春婦紛いな仕事(所謂ホテトル)をしていた。彼女を派遣していた事務所は現在も繁華街の裏通りに存在し、今も営業している。店は風俗営業法違反で何度か摘発されているが、名を変え店長の首を挿げ替え存続している。ちなみに店は美容グッズの出張販売とその実践を行うエステ関連商品販売業を装っている。

こういった店は暴力団の試金石になっているが、「何も知らない」者を雇い狡猾にその繋がりを隠している。件の店もその例に漏れず、店長や従業員から青薙組との関係を聞き出すことは出来ない(本人達も知らない)。しかし、店が存在する場所は青薙組のシマであり近隣店舗…特に水商売関係は決して表立って口には出さないが「ショバ代」を組に上納している。また、店の経理(裏帳簿)を調べれば不自然な額の金が特定の口座に支払われていることが分かる。この口座は末次達郎のダミー会社のものである。口座を特定する場合など、<経理>や<コンピューター>のロールをさせても良い。

・同居人
アンジェラ(アウグスティナ)は店に近い雑居ビルの一室で暮らしていた。10畳ほどの部屋に10人以上が昼夜勤務の入れ替わりで住んでおりそのほとんどが外国人の不法就労者である。アンジェラの死以降、警察が捜査に訪れた影響で、現在はビザがある二人の外国人女性(台湾人とロシア人)が居るのみである。
二人は語学留学で日本に来ていると片言の日本語で語る。これは嘘で、実際にはアンジェラ同様のいかがわしい商売をしている(<心理学>を振るまでも無く身形や雰囲気から伝わる)。アルクトゥルスの息が掛かっており、「下手なこと」を離さないよう口止めをされている。しかし、金銭を持ち出した交渉には脆く、口を割る可能性が高い。彼女達はアルクトゥルスが台湾マフィアで、自分たちを違法な商売に斡旋していることは知っているが、組織の実態まではわからない。

以下、同居人が知るアンジェラについての情報。

①コミュニティ
アンジェラには独特なコミュニティがあり、オフの日はほとんどその者達とすごしていた。日本に来た時以来の仲間で、彼女曰く前世から繋がるスピリチュアルな関係だという。コミュニティにはある目的があり、アンジェラは稼いだ金を全てコミュニティに注ぎ込んでいた。同居人もコミュニティの会合に誘われたが、怪しい宗教だと思い断った。その為、コミュニティの実態や目的については知らない。

同居人は勧誘の際、アンジェラからコミュニティの所在地と代表者の名前を聞いている。津川町郊外…牧立開発が手掛ける大規模宅地造成計画範囲…の大型マンション(3年前に宅地造成の一貫として建てられた)の一室で、「スルガシュンイチ」という人物がコミュニティを仕切っている。

②霊感
アンジェラは自分に霊感が有り、霊の声を聞くことが出来ると話していた。自分が住んでいたマレーシアの村は前近代的なところがあり、シャーマニズム思想が根深く子供の頃から霊的なものに触れて育った。そのため、見えざるもののメッセージが受け取れるという。

③友達
アンジェラは死ぬ以前、奇妙なことを言っていた。日本に来た時に知り合った仲の良かった女友達…コミュニティの仲間の一人…が自分に会いたがっている。その友人は6年前に突然姿を消したが、ここ最近になって自分に会いたいという彼女の声が心に響くという。5月3日、アンジェラは心の声を頼りにその友人…ヘレナと言っていた…を探しに行った。

・仲介業者
アウグスティナ・ニー・リーリャンを斡旋した闇業者の元を辿ると「アルコルワークス」に至る。かつてランゲージスクール・スルガであったビルは現在は人材派遣会社アルコルワークスが所有している。この派遣会社は一般業種の他、ナイトワーク業界への派遣も力を入れており外国人の登録者も多い。津川町の水商売従事者は、この会社或いは会社の関連企業から派遣されている者も少なくない。
人材派遣会社アルコルワークスの社長は末次達郎である。

⇒売春斡旋
アルコルワークスは台湾マフィアと共謀し東南アジア系の外国人を中心とした人材を売春業に斡旋している。これは当然違法であるが、下請けの孫請け等枝葉に分かれた業者や仲介人を使い巧みに法の目を掻い潜っている。青薙組の工作もあって、警察は確たる証拠を掴めないでいる。
このことは夜の商売に詳しい者なら誰でも気が付いていることだが、青薙組やアルクトゥルスに睨まれることを恐れおいそれとは口にしない。
[PR]
・祭具殿
降城夫婦の暮らす家屋の裏にある木造平屋の建物。南京錠によって硬く閉ざされている。神事の用具一式の他、祝詞などが記された古文書などが整理されて置かれている。部屋の中央に五角形の台座に神殿を模した木製の祠があり、そこに神体である球状の石が納められている。

①神体
神体は御影石を球にしたもの。<オカルト>で神道系の御神体にしては比較的オーソドックスなものであることがわかる。この時、神体を手にした者は、<POW10>との抵抗ロールを行い失敗するとMPを1失う。抵抗ロールは神体を離し再び触れる毎に行い、その都度MPを失う可能性がある。この経験をし、<クトゥルフ神話>に成功すると、神体が魔力を蓄積する装置=マジックアイテムであることに気が付く。神体にはMP30分の魔力が蓄積されており呪文で消費するMPとして使うことが出来る。MP30を超えてさらにMPを蓄えることは出来ない。

②旧き印
書物の中から神話的なものを探すという明確な行動を取る探索者がいた場合、その者が<クトゥルフ神話>を1%以上持っているなら<図書館>と<目星>をさせる。両方に成功した場合、奇妙な図形の書かれた古文書を見つける。図形は崩れた星型で中心にかぎ裂きのような波状の印が描かれている。<クトゥルフ神話>を持つ者はこれがエルダー・サインを模した図であることに気が付く。
図形には古文が添えられており、<日本語>の1/3(端数切捨て、古文書読解とする)で内容を理解することが出来る。文面には図形の書き方が記されており、<INT×3>で呪文「旧き印」を習得する。但し、このロールに失敗すると間違った解釈をしそれに気付いていない扱いとなりシナリオ中はこの呪文を習得することは出来ない。
古文によると、この図形は祭神である天香香背男の輝く星を宿した印で、邪気を退ける力を持つとされる。

※古のもの
祭具殿の書物には、降城神社や大椀村が古のものに由来することが記されている。これは、ここにある書物(多くが古文書である)を全て読み、<クトゥルフ神話>の知識に照らし合わせれば気が付くことであるが、それには十分な研究時間を有する。しかし、本シナリオにはタイムリミットがあり、そのような時間を確保する余裕は無い。書物をくまなく読み研究した場合、<クトゥルフ神話>を2ポイント得る。
なお、降城慧は盲目的に家業に従事しており、代々受け継いで来た祭具殿の書物は大事に保管する(のみの)対象である。彼は書物の中身を吟味したことは無く、書かれている内容について一切知らない。

・神楽殿
降城神社には本殿と併設して舞踏を奏するための舞台がある。ハライの儀式はここで行われる。舞台は五角形をしており、一般的な神楽殿としてはあまり見られない形状である(必要なら<オカルト>)。

⇒幽霊
舞台に上がった時点で<POW×3>に成功すると、只ならぬ雰囲気が漂っていることに気が付く。背筋が凍るような感覚で恐怖心を煽られこの場所から一刻も居たくないと思う。それでも留まると、舞台の中央に白い靄のようなものがかかるのを目撃する。靄は次第に人の形を作り、最終的に着物姿の女性のシルエットになる。白い影は舞台を一定のリズムで移動している。これを目撃した者は正気度判定を行う(0/1D6)。
また、津川学院で牧経絵留の文化祭のVTRを見ているか降城慧の簡略的なハライの舞を見ている者は<アイデア>で、白い影の歩行がそれらの舞踏と同質のものであることに気が付く。影の舞はそれらよりも複雑で、はるかに精巧さを感じる。

白い影の舞を見た者は<POW20>との抵抗ロールを行う。失敗すると金縛りに合い身動きが取れなくなる。舞は10分間続き、1分毎に抵抗ロールを行うことが出来る。金縛りに合っている間は白い影の舞を凝視しなくてはならない。舞を見ている1分経過する毎に感覚が研ぎ澄まされるような寒気が続きMPを1失い、さらに2分経過する毎に正気度を1失う。
白い影に話しかけてもリアクションは無く、10分間舞を踊り続けた後に消える。白い影に攻撃を仕掛けた場合、当たり判定の成否に関わらず影は姿を消す。

舞を目撃した者は、<DEX>ロールで舞踏の歩行をマスターすることが出来る。舞は2分で一区切りで、このロールは2分が経過する毎に行える(最大で5回行える)。このロールは<芸術:舞踏(ダンス)>を<DEX>ロールの代わりに用いることが出来る。

白い影の舞踏に対し、<クトゥルフ神話>でこの舞が神話の儀式的要素を含んでいることに気が付く。

この場に降城慧が居る場合、白い影が絵理の舞にそっくりであることを言う。慧は探索者が何もしなければ白い影の舞踏を終わるまで凝視するので、一時的狂気に陥る可能性がある。狂気に陥った場合、彼はその場に蹲り、涙を流しながら娘の名前を連呼し続ける。

⇒払いの舞
舞は古のものの流れを汲む者達が、先祖の恐怖の記憶を発端にあみ出した神話生物から身を隠す術である。特殊歩行によって自らから神話生物の注意を逸らし移動することが出来る。あくまで注意を逸らすだけで、完全に攻撃を防ぐものではない。扱い的には旧き印と同じく、一定の神話生物の興味を削ぐ効果でしかない。気付かれず攻撃を当てるといったことは出来ないし、主体的に動けば通常通り迎撃に合う。
効果は舞っている間持続する。舞うには<芸術:舞踏(ダンス)>に成功する必要がある。失敗した場合、<アイデア>に成功することで間違いに気が付く。2分につき1セットで、その都度<舞踏>のロールをする。また、霊的な力を消費するため、1セット毎にMPを1D3ポイント失う。
[PR]
◎降城神社
大椀村を一望できる高台にある。神社は天香香背男(あめのかがせお)を祭神とする。天香香背男は日本神話に登場する神で、光り輝く星(主に金星とされる)を司る。このことから降城神社は星宮神社の系列に属すると考えられる(必要なら<オカルト>)。

牧立絵理の実家であり、絵理の両親である老夫婦が二人で暮らしている。「降城慧(ふるぎ・けい)」が年老いた今も宮司を勤める。妻「降城清乃(ふるぎ・きよの)」は著しい痴呆症により3年前から寝たきりである。

・降城慧
降城慧は厳格な人物であり、代々続く宮司家業を粛々とこなしてきた。神職を誇りに、オソレの脅威から村を守ることを使命と考えている。幼い時より巫女として神事全般を教授した一人娘の絵理には、婿を取らせ村の神事を司る使命を後世に残すはずだった。娘を京都の大学に行かせることには反対であったが、宗教は元より広く知識を身につける必要性を妻に説かれ、渋々承諾した。その絵理が逃避行同然に牧立滋の元に嫁いだ時は、家業が途絶えることに大きな喪失感を味わった。村民から激しい非難を浴びせられ、絶望に打ちひしがれた慧は娘の進学を後押しした妻の清乃に当たる様になった。この時のことを慧は清乃が寝たきりになった原因と考え(実際は老人性痴呆症が原因)、強く後悔している。

6年前の絵理の死を境に、自分達と村を捨てた娘を心の中では許している。母親を失った孫の絵留のこともこの時以来ずっと気に掛けていた。しかし、他の住人への建前と重責を担う使命感からそのことは決して口に出さず、過疎が続く現在も淡々と神職を全うしている。

探索者が彼から絵理に関する情報を聞き出そうとしても知らぬ存ぜぬを通すが、孫である絵留の状況を伝え<説得>に成功するなどアプローチ次第では重い口を開く可能性はある。慧は家業に関しては使命として盲目的に従事しており、その誇りある仕事を(クトゥルフ神話的アプローチなどで)疑問視されることには激しく反発する。また、村の成り立ちや神事にクトゥルフ神話的要素が含まれていること等、全く知らない。

以下、降城慧が知る情報。

①絵理
絵理はオソレから免れるハライの神事を行う巫女であった。幼少より巫女として所作を学び、10歳より年2回のハライの舞台に立ち、住民から敬われる存在であった。父である慧には無かったが彼の母親がそうだったように絵理には些細ながら神秘的な力があった。雨が降る気配を感じ取ったり、作物や家畜の異常を誰よりも先に気付いたり、無くした物を見つけ出したり…そういった第六感的な能力に秀でた娘であった。

②舞踏
ハライの神事の所作で、降城家に代々継承される。独特な歩行で、黒い翼で表されるオソレから身を隠す動作を意味する。慧は年齢による足腰の衰えの為、完全には踊れない。現在の行事には簡略化して舞っている。

慧に舞踏を行ってもらった場合、<オカルト>に成功するとこれが一部地域の部族民に伝わる儀式と似ていることに気が付く。特にオーストラリア、南アフリカ、南アメリカなどの局地地域の先住民に共通のステップが見られる。ふまえて、<クトゥルフ神話>でこれが魔術的意味合いを持つ歩行であることを推察する。邪悪な存在から身を守る方法の一つで、旧き印の効果と似ているところがある。慧の踊りは不完全である為、習得は出来ない。また、津川学院で絵留の踊りのVTRを見てる場合、<アイデア>でこの踊りが元であることに気が付く。

③お守りと神体
津川学院寮の牧立絵留の部屋にあった砕けた欠片は元は降城神社の神体を模したものである。神社は天香香背男が宿るとされる球状の石を祭っている。その石を模して小さな球体にした装飾品が代々降城家の神職に受け継がれ、絵理はそれを渡されていた。装飾品には邪悪なものを近付けさせない効果があると伝わる。

神体は祭具殿に保管されている。降城慧は神体を人目に晒すことを極力避けようとする。祭具殿には錠前が掛けられ、その鍵は慧が保管している。

・降城清乃
痴呆症がひどく、3年前より床に伏した状態である。現在は夫の慧に看護されて暮らしている。暴れたりといった挙動は無いが、一日中ぼんやりとしている。話をすることは可能で一見普通に受け答え出来るように思えるが、会話内容に整合性は全く無い。
ただ、絵理に関する質問をした時、ぽつりと「舞台で踊っている」といったことを言う。絵理について発するのはこれだけで、それ以上聞いても関係ないことを口にするのみである。
[PR]
◎大椀村
福井県南石市南石町大椀。2年前に市町村合併し、地区のみの存在となっている。元々過疎が深刻な場所で、この地区の現在の人口は僅か36人、13世帯のみである。平均年齢72歳と非常に高く、60歳以下は誰一人として住んでいない。田園風景が広がるが田畑の多くが手入れ無く荒れていて、日中に人影を見ることは無い。荒廃の雰囲気が漂い、典型的な過疎の農村といった印象。

元々閉鎖的な村であった為、住民は寡黙な者が多く(高齢であることも拍車をかけている)彼らからの情報収集は困難なものとなる。住民のこうした気質は村の起源に由来している。

・起源
大椀村は太古に古のもののコロニーがあった場所である。星から飛来したクトゥルフとその眷属との戦いに敗れ、安住の地を追われたかつての地球の支配者が隠れ潜んだ場所の1つである。村の地底深くに活動を停止したショゴスが眠っており、追っ手に怯える主人たちの記憶を留めた巨塊は土地に住む者の潜在意識に影響を与えている。それは外界を嫌う住民の気質として表れており、その負の感情は「オソレ」という名で呼ばれる。当地にはオソレを取り除くための「ハライ」という儀式が存在する。

⇒オソレとハライ
風土史にその記述がある。

オソレは悪いもの=災いであり、大椀に住む者はオソレを畏怖の対象として昔から忌避してきた。定期的にオソレは村にやってきて住民に災難を与える。オソレを祓うためのハライと呼ばれる儀式があり、夏至と冬至の前日の年中行事として現在も降城(ふるぎ)神社で行われている。オソレは概念的なものと考えられるが、ハライの行事では大きな黒い翼のみの存在として表されている。降城神社の行事は、舞台で宮司や巫女が独特な歩行により黒い翼を模したオソレから逃れる寸劇が神事として執り行われる。神事が行われた日は住民は神社や集会所など多くが一所に集まり、夜が明けるまで外に出ずに徹夜で朝を迎える。庚申の儀式に似ており、その派生と考えられる(と書物は締めくくる)。

・情報収集
大椀の住民から情報を聞き出すのは非常に難しい。彼らは自分達や村のことを自ら語ろうとはしないし、そもそもよそ者である探索者と関わろうとしない。それでも<説得>など交渉スキルを駆使すれば重い口を開くかもしれない。

以下、大椀住民が知る情報。

①オソレ
オソレは陰鬱とした負の感情で、定期的に心の奥底から湧き上がってくる。オソレが表面化すると何をするにも恐怖を感じてしまい、オソレが過ぎ去るまでじっとするしかなくなる。特に外に出ることを嫌い、空から(それこそハライの儀式の翼を持つ存在=オソレのような)黒い何か悪いものが襲い掛かってくるような感じがするという。
だいたい夏至と冬至あたりに多く兆候を感じ、その時期にハライの儀式をすることによって奇妙な感情を抑えられる。ハライは住民にとって生活する上で重要な行事なのである。

②巫女の消失
降城神社の巫女であった絵理が村を去ったことに関して、住民は怒りを覚えている。絵理はオソレを抑える為のハライを行う巫女であるばかりか、神職を継ぎハライを後世に伝える存在であり、それは大椀の存続を意味していた。絵理が村を出た時、住民は彼女の両親を激しく非難した。また、時が過ぎた今尚、絵理に対する憤慨は住民の間から消えていない。
[PR]
◎牧立開発
牧立滋が社長を勤める総合不動産業者。株式会社。京都中心街に自社ビルを持つ。業界では中堅規模で関西ではそれなりに名が知られている。

・特別行政対策委員会
副社長、牧立美都子が発案した社内委員会。オフィスの一角に部署が設けられている。デリケートな部分がある行政関連の業務に適切に対処するため、専門的に審査、指示、管理を受け持つ。受注した行政からの仕事に関した情報は全て委員会を通り、各部署に指示がなされる。
委員長は牧立美都子。社外からも委員が選ばれており、大学教授や企業家、評論家、官僚出身者など識者や専門家が名を連ねている。

⇒末次達郎
特別行政対策委員会のメンバーに末次達郎が企業家として参加している。委員会は事実上、彼が仕切っており名を連ねるお歴々も全て末次が手を回した者達である。

・宅地造成計画
6年前に京都郊外に自動車工場が誘致され、それに伴い工場近隣の市町村を対象に大規模な宅地造成がなされた。牧立開発もその造成計画の一端を担った。特に造成区域に該当する津川町郊外の土地買収に関し多大な成果を出している。この区域は現在、マンションや住宅の建設ラッシュで街が形成されようとしている。

⇒総合医療センターとBDDP社
牧立開発が特に重点的に土地買収交渉を進めた個所に、総合医療センターが建設されている。医療、看護、リハビリの施設、それらに付随する機材・機器の備蓄場所等、医療及びそのケアを全て一体化した複合型の病院である。牧立開発は総合医療センターの誘致を宅地造成計画の柱としている。
センター建設の筆頭出資者は臓器のメガバンクであるBDDP社であり、日本の移植医療の革新的拠点として期待されている。

・地上げ屋
牧立開発には土地買収などに関して地元との交渉を専門に行う下請けが存在する。彼らは法律的にグレーゾーン(或いはレッドゾーン)の手段を好んで使い、意図的な風評で不安感をあおり時には暴力を講じるなど強引な手口で事に当たる。不当な地上げ行為を担う彼らは表面上は会社に属してはいない。主な構成員は青薙組の連中で、末次達郎の指示で動いている。

⇒裏金
牧立開発の会計データをくまなく調べれば(<経理>)、使途不明金が存在するのがわかる。こうした金は美都子を通じて末次を経由し、地上げの報酬として青薙組に渡っている。この事実は社内でもトップシークレットで美都子や末次の息が掛かったもの(特別行政対策委員会メンバー等)しか知らないが、会計担当など一般社員の中に薄々気付いている者も居る。そうした人物を情報の糸口にしても良い。
[PR]
◎牧立美都子
牧立滋の妻。牧立開発副社長。
現在、葬儀疲れで床に伏している状態で、牧立邸を訪れても簡単に彼女に会うことは出来ない(家政婦や牧立開発の社員からやんわりと断られる)。

美都子は滋の死以降、夜毎現れる絵理の幽霊(と彼女は信じている)に悩まされ、正気度を失い恐慌状態にある。神経過敏で入室を激しく拒絶する。まともに話せる状態ではなく、特に絵理や絵留の話を持ち出すとヒステリーを起こし、物を投げたりペーパーナイフを振り上げ襲い掛かって来る。

美都子から話を聞くには<精神分析>などを駆使し落ち着かせる必要がある。彼女が話すことは専ら自分を苦しめている「幽霊」のことばかりで、他のことには聞く耳を持たない様子である。美都子が滋と結婚した本当の理由など核心的なことを聞き出すには、牧立開発の内部情報から真相を割り出し証拠を突きつけるか、幽霊の原因がそこにあるなど言って弱みに付け込むなど何かしらの手順を踏まなくてはならない。

・幽霊
美都子が語るには、毎晩、枕元に滋の前妻、絵理が立つという。先月末から寝ていると何者かの気配を感じるようになった。はじめは気のせいだと思っていたが、瞼を開けると眼前を一瞬「何か」が横切ったり、異様な寒気を感じたり、黒い靄のようなものが見えたりと次第にエスカレートして行った。特に滋が死んだ夜から「それ」は顕著になり、黒い靄は人のような形になって耳障りな奇怪な声で何かを囁くようになった。

美都子はこれが絵理で、滋を奪った自分に復讐しに来たと信じている。絵理の生前から滋とは肉体関係にあり、そのことは絵理も感づいていたはずと美都子は見ている。また、4月26日に帰省するよう説得しようとして絵留と口論になった際、怒りのあまり絵留が大事にしていた絵理の形見のお守り(ガラス細工のペンダント)を奪い、床に叩きつけ踏み潰したことも関係していると思っている。さらに滋を事故に追いやったのも「幽霊」の仕業と疑っている。夫の次は自分の番ではないかと怯えている状態。

⇒幽霊の正体
美都子が見ている「幽霊」は、絵理ではなく絵留の恨みの思念がショゴスの力により増幅した言わば怨念的な力によるものである。この怨念は美都子にしか見えず、毎夜彼女の正気度を着実に奪っている。
他の者が感じたり見ることは出来ないが、絵留の肉体の推移(タイムリミット)に合わせ、美都子を通じてヒントになることを探索者に与えても良い。例えば、幽霊の声が「テケリ・リ、テケリ・リ」というものであるなど。

・結婚の真相
美都子は末次達郎の息の掛かった女である。6年前当時、京都郊外に自動車工場が誘致され、それに伴う大規模宅地造成計画(津川町郊外も含まれる)に牧立開発が関わっていた。これに目をつけた末次は美都子を滋の後妻になるよう仕向け牧立開発を裏で操ろうとした。実は6年前のひき逃げ事故も末次が仕組んだことだが、美都子はそこまでは知らない。美都子は金持ちと結婚させてやるという末次の言葉に唆され、彼の片棒を担いだ。
美都子の役割は主に宅地造成計画に関して牧立開発の内部情報を末次にリークすることである。末次はその情報を元に障壁となる事項を、青薙組構成員を使い牧立開発が有利になるよう秘密裏に処理している。
[PR]
◎牧立滋
関西の中堅不動産、株式会社牧立開発の社長。5月3日の交通事故で事故車両助手席に搭乗し死亡。死因は、車内で全身を激しく打ったことが原因の内臓破裂によるショック死。ほぼ即死であったと診断されている。

京都の牧立邸(一等地に建つ屋敷)では主人の葬儀が終わり、家人(家政婦、社長の側近ら)が参列出来なかった弔問客の応対に追われ慌しい状態にある。その中に滋の妻、美都子の姿は無い。葬儀疲れで体を壊し、自室に篭っているという。
※牧立美都子に関しては別項目も参照。

以下は牧立邸の家人、弔問客、牧立開発の社員などから得られる情報。適宜、交渉系のロールをさせても良い。

・6年前の事故
滋は6年前に先妻、絵理を交通事故で亡くしている。
7月18日、午後5時15分、自宅から数分足らずの交差点で買い物に出かけた牧立絵理とその娘、絵留が撥ねられた。車は逃走、20日に山中に乗り捨てられている車体が発見された。盗難車で、結局、犯人の特定には至らなかった。
二人は病院(京都の大病院)に搬送されたが、間も無く絵理の死亡が確認された。絵留も内臓を損傷する重体であったが、手術により一命を取り留めた。

・先妻と後妻
6年前に死亡した絵理とは滋が大学時代に知り合い(同じ大学の同級生)、卒業後直ぐに結婚した。滋の家は元々小さな不動産店を営んでおり、家業を継いだ滋が絵理と二人で業績を上げ関西に少しは知れるまでに成長させた。絵理の実家は田舎の神社で、幼い頃より巫女として祭事等コミュニティのまとめ役として培った彼女の経験が仕事に活かされた。牧立開発の飛躍は絵理の力が礎となっているところが大きい。
絵理の死後、半年足らずで滋は現在の妻、美都子と結婚した。美都子は滋が行きつけだった高級料亭の女将であり、絵理の生前からプライベートな付き合いがあった。こうしたことから結婚当初は非難的な視線が注がれたが、美都子が次第に滋の会社を取り仕切る存在になり表立った非難は無くなった。美都子は現在は副社長のポストにある。

⇒絵理の実家
絵理は元々、福井県の小村にある神社の一人娘で、幼い頃より巫女として育った。山深い里は現代においても閉鎖的なコミュニティ意識が強く、祭事を仕切る神職は村のまとめ役であり巫女の絵理もまた村民から信頼を一身に受けるポストであった。滋との結婚にあたり、本来婿を取り神社を存続させることを期待されていた(その為に京都の大学で学んでいた)絵理は両親や村民から激く反対された。しかし、絵理は家業より滋との愛を選び、その結果、故郷と絶縁することとなった。結婚以来、二人は絵理の実家と交流はおろか一切の連絡を取っていない(絵理の実家側が拒否している)。

絵理の実家は福井県の山奥、大椀(おおわん)村にある。現在は町村合併し、南石(なんごく)市南石町大椀。

・美都子と絵留の関係
絵理を亡くした直後の再婚であり、絵留は美都子を良く思っていなかったし美都子も自分にいつまでも懐かない絵留を疎ましく思うのに時間はそうかからなかった。お互い口には出さないまでも快く思っていないことは家政婦ら傍目にも明らかであった。絵留が津川学院に通い、寮暮らしであることはこうした経緯に由来するところが大きい。

⇒パーティ
ゴールデンウィーク最中の5月4日、会社や取引先のお歴々とその家族を招いてのホームパーティが予定されていた。しかし、絵留は再三に渡ってこれを拒んでいた。4月26日、美都子が津川学院の女子寮に赴いたのは絵留を説得するためであったが、交渉に失敗した。その後、パーティのある前日に滋が絵留を連れ戻しに行き、事故が起きた。

・ホステス
結婚以前、美都子が料亭で働いていたというのは、滋と美都子が体裁を取り繕う為に虚偽を語っているという噂がある。本当はクラブでホステスをしていたという。
これは事実で、滋に近しい者(友人、滋が信頼を置いていた部下や取引相手)は知っており実際にクラブで美都子から接客を受けている者もいる。このことは二人から厳しく口止めをされており、特に社員から聞き出すことは困難である。

クラブは京都にあったが、現在は撤退している。料亭も京都にあるがこちらは今も営業しており、現在の女将から美都子が前の女将であった裏付け証言が取れる。但し、これは美都子らが根回しして吐かせた虚言であり、<心理学>で看破できるし、従業員らを問い詰めれば真実ではないことがわかる。

⇒クラブ
クラブに関して現地で聞き込んだり、登記簿などを調べれば、そのクラブが「末次達郎(すえつぐ・たつお)」という人物が経営していたことが分かる。彼は表向きにはクラブなど水商売業を手掛ける企業家だが、青薙組の幹部「末次大寅(すえつぐ・おおとら)」の実弟でもある。美都子が勤めていたクラブは高級クラブではあったが、強面な輩も出入りしていたと現地の同業者は言う。
[PR]