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5.室岡芳輝

先物取引会社、室岡貿易社長。業界の評判はすこぶる悪いが、あくどい手口で金をせしめ、会社自体はかなりの利益を上げていた。その矢先、先月9月3日、銀座にある事務所兼自宅ビルで首を括って自殺を遂げる。

以下、室岡の会社の従業員や使用人、マスコミなどから得れる情報。

・死の直前の様子
室岡は死ぬ前日、「八木里宗雄(やぎさとむねお)」の晩餐会に出席している。八木里は元子爵の家柄で、事業家としても名を馳せている。
室岡は深夜に一度帰宅、人に会うと言い残し一人で再び出て行った。明け方に帰宅した時はひどく疲れていたようで、昼まで寝ると使用人に告げ寝室に入った。ところが、午後を過ぎても起きてこず、様子を見に行った使用人が、ベッドの柱に括りつけた麻紐で首を吊っている主人を発見した。恰好は今朝帰宅した時のまま。部屋の書類等は事前に整理されており、醜聞と目されるものは出なかった。また、遺書も見つかっていない。
当夜の晩餐は和やかなもので、室岡の様子も平素と変わらなかった。最近は大きなトラブル(と言ってもきな臭い会社なのである程度の揉め事は抱えているが)もなく、自殺の原因は不明。

・詐欺
矢立幸一郎の件は、室岡の仕組んだもの。室岡は矢立の妻、静子を気に入り、財産共々手中にしようとしていた。企てはほぼ成功したが、矢立の破産が確定した1926年1月、静子が失踪する。室岡は興信所を雇い静子を探させたが、結局見つけることは出来なかった。

※矢立をはめる策は、実は静子が室岡に持ちかけた。慎重な矢立に先物買いを無理に進めたのも静子。室岡に渡った矢立の財産の半分を持ち出し、姿を暗ませた。尚、室岡が静子に執心だったのは本当。
この事実は室岡の側近しか知らず、探索者が深く追求しない限りは情報として出さなくとも良い。

・朽木清司
探索者が調査する以前に室岡を調べている人物が居る。「朽木清司(くちきせいじ)」という男で、室岡の死後、間も無く彼の事務所を訪れ、死亡当日の様子や室岡の身辺を聴取していた。
痩せた長身の白髪の老人で、インテリ的などこか冷めた物腰だった。
by nurunuruhotep | 2008-11-04 22:08 | パンの大神 | Comments(0)