2.シナリオ背景

雨月珈琲堂の店先に水筒を置いたのは宇宙からの色の残滓である。

結城敏夫はハイキングに出向いた際、ある風景に魅せられた。見渡す限りに咲く薔薇。それは愛した妻との若かりし日の思い出と重なる。

老人は薔薇の見える崖に通い続けた。思い出を描き留める為に。しかし、来るたびに躍る心とは反対に肉体は静かに蝕まれて行った。

老人が見ていたものは宇宙からの色であった。

かつてその場所には本当に薔薇の花が咲いていた。そこに宇宙からの色の種子が撒かれた。発芽した色たちは周囲の命を吸い、全てを枯らした。
十分な養分を得て育った色たちは故郷に帰還したが、兄弟達との餌の取り合いに敗れた一体が残された。彼は眠りに就き、静かに死を待っていた。

その「色」の記憶に結城は誘われた。動けず弱っていた怪物は、ゆっくりと彼の生命を奪って活性化し、故郷へと帰った。
店を訪れたのは、色の残骸が、吸った餌の記憶を再生したに過ぎない。
[PR]
by nurunuruhotep | 2013-02-28 20:45 | Black Coffee | Comments(0)