カテゴリ:Coffee Saucer( 11 )

クトゥルフ神話のちょっとした不思議をコンセプトにしたショートシナリオ、雨月珈琲堂綺譚。

今回はイスの偉大なる種族です。円錐フォルムがどこか愛らしいですね。

話の構造はすごくシンプルですが、ポイントは仕掛けに気付いてもらえるかという一点に尽きます。もう少しヒントを出してもいいかも知れませんね。日記に蓋にして回すなんて書いてあるとちょっと興醒めですが。

楽しんでいただけたら幸いです。
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雨月 秋成(うげつ あきなり)
男性、48歳。雨月珈琲堂店主。
STR12 CON13 SIZ13 INT15 POW18 DEX16 APP15 EDU18 SAN90
耐久力13 db+1D4
技能:オカルト75%、機械修理50%、クトゥルフ神話5%、経理75%、芸術(絵画)60%、写真術65%、信用90%、心理学80%、説得85%、値切り85%、博物学75%、目星70%、おいしいコーヒーを淹れる99%
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容器に例のソーサーを裏返して蓋をし、右回りに2周、左に3周させると次のことが起こる。

ソーサーの底に幾何学模様(サイロにあったディスクと同様な)が浮かび容器が鈍く輝く。それは一瞬で、光が消えると共に現れていた模様も無くなっている。容器に何か入れていたなら、それは消失している。この現象は一度きりで、以降は同じやり方をしても何も起こらない(サイロの虫かごと同じ仕組み)。

この時、容器に入れた物がコーヒーだった場合、コーヒーは跡形も無くなっているが、代わりに硬貨が1枚ある。女王の横顔のシリング銀貨。調べれば、ヴィクトリア朝後期に製造されたものであることがわかる。

・報告
雨月に事の次第を話すと…

「ホームズが活躍した時代はドリップよりも煮出しが主流で、混ぜ物がされていたと聞きます。かなり煮詰めていたらしく、今飲んだとしたら相当えぐく感じるでしょうね」

彼はそう語ると、コーヒーを振舞う。いつもと違う味がする。聞くとオーストラリアの豆で淹れたコーヒーだという。

「移民の国、旅人の味です」


◎報酬
このシナリオの参加者は1D6ポイントの正気度を得る。
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小山の麓、辺りを木々が囲む人気の無い個所に黒い塔…サイロがひっそりと聳えている。巨大な円筒状で、鉄の外観は黒くさび付いており長い年月の経過を感じる。
閉じた扉には閂錠があるが施錠はされていない。<アイデア>の半分か<追跡>でここ最近開かれた痕跡に気が付く(元々鎖錠が巻かれていたが現在は無い)。

サイロ内部、円形のスペースの中心に一本の木があり、うっすらと青白い光を放っている。ライラックで紫色の花が咲いている。よく見ると、樹皮にはカブトムシやクワガタ等の甲虫が群がっていることがわかる。

探索者が木に近付くと、ブゥンと電子音がすると共に発していた光が消える。すると、群がっていた甲虫が一斉に羽根をばたつかせ、開いている扉の外へ飛び立つ。ライラックは花を散らし、紫の花弁がサイロ内の地面を覆う。

これは木に仕込まれていた保存装置(木を一定の状態に保ち虫を留め置く為の)のエネルギーが丁度切れたことによるものだが、役割を終えた装置は完全に消滅しており木を調べても何も見つけることは出来ない。

・虫かご
サイロ内部を捜索すると、瓶や缶、菓子などの小箱、小皿や鍋蓋が幾つも見つかる。容器類の中身は無い。どれも普通に市販されていた物の無価値なガラクタである。
それらに混じって唯一空でないものがある。透明なガラス瓶。口を無地のディスク(CD・DVDメディアのような)が塞いでおり、中に一匹のカブトムシが入っている。
瓶に触れようとすると、突然ディスクが回り出す。ディスクは右回りに2周、左回りに3周、瓶の上で回転して止まる。すると、ディスクの表面に幾何学模様が浮かび、同時に瓶全体が白い光を発する。光は一瞬で消え、瓶の中のカブトムシがいつの間にか居なくなっている。ディスクに浮かんでいた模様も無くなっている。

この瓶とディスクの仕組みは中の物質を別の場所に転送するものだが、一度の起動で役割を終える。元々は一般に売られていたガラス瓶とCDで、起動後のものを調べても別段不審な点は無い。

起きた事象やディスクに浮かんだ幾何学模様等から<クトゥルフ神話>で、これらがイスのテクノロジーに関連していることを推理する。
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大家の遺体が発見されたのは広い自然公園の一角。川と接した個所で、ホームレスが多く暮らす。

◎センセイ
「大家智弘」の名前を知る者は河原の住人の中に誰一人居ないが、彼の写真を見せたりテントで死んでいた人物のことを尋ねると、皆口々にその人物を「センセイ」と呼ぶ。

・来訪
センセイは6月の初め頃にふらっと現れた。身に着けているもの以外は手荷物は何も無く、最初は自殺志願者だと思い警戒した。

・昆虫採集
センセイはこの一帯や高台のライラック園で昆虫を採集していた。カブトムシやクワガタ、カナブン等の甲虫が主で、捨てられた瓶や箱を利用して細かく分類していた。あまりに研究熱心な様子から「センセイ」と渾名された。

・変人
「研究」以外には無頓着で、放って置くと雨露関係なしに食事も取らずに没頭する。見かねたホームレス仲間達が住居用にテントを提供し、何かと世話を焼いていた。センセイは変わっていたが、いつも笑っていて憎めない人物であった。笑顔を絶やさないことを尋ねると、「人は笑う動物だから」と答えた。

・恩人
センセイには恩人がいるらしく、自分が係っていた土地のトラブルを解決する大きな助けになった人物だという。また、自分が研究(おそらく虫取りのこと?)出来るのはその人が環境を提供してくれたお陰と言っていた。
その恩人は長らくの夢だったという旅行に出掛け、もう会うことは無い。通信手段のトラブルで、旅先のコーヒーがまずいと嘆く知らせが一度届いたきり音信不通とのこと。

・死の直前
死ぬ3、4日前、センセイは妙なことを言っていた。「もうここに留まるのは限界だ」今思えば自らの死期を悟った発言だろう。


◎テント
大家が死んでいたテントは既に片付けられている。元から生活感が無く、目立った遺留品は残っていなかった。死んだ時には飼っていた昆虫は一匹も居らず、センセイがどこかに逃がしたものと皆思っている。


◎記憶喪失者
昨日(探索開始の)の記憶の無いホームレスがいる。
今朝になって住居のテントの中ではたと自分を取り戻した。それまで本人はどう過ごしていたのかわからないという。昨日以前の記憶に関しては、はっきりした口調で答え、病気を患っていたり虚偽を言っている感じは無い。
他の住人に聞くと、そういえば昨日は見かけなかったと答える(生活柄から別段気にする者はいない)。

・花弁
履いていた靴の底やテントの中を調べると紫の花びら(ライラック)が数枚見つかる。

・催眠
この人物に対し、時間をかけてしつこく問い詰めたり、<精神分析>によるアプローチを試みた場合、普通に話していた様子が突如一変する。無言になると立ち上がり、ぐるぐるとその場を回転し始める。右に2回、左に3回ほど周るとぐらりと膝から崩れ落ちて倒れる。数秒の間気絶するが直ぐに目覚める。
起きた後に、何故そんなことをしたのか聞くと、何もわからないと答える(嘘を言っている様子は無い)。

※このホームレスこそ雨月珈琲堂にソーサーを届けた人物である。その時はイス人に肉体を支配されていた(現在は本人の精神が戻っている)。
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自然公園敷地内のライラック園は高台に位置する。現在は時節柄花を咲かせている木は1つもなく、どれも枝に青々とした葉が付いた状態である。

高台から見下ろすと川が流れていてその河川敷や周辺に登山用のテントや、ブルーシートを張って作ったような小屋らしきものが目立つ。これらはホームレスの住居である。

・大家
来場者に大家智広の写真を見せたり特徴を伝えると、似たような人物をライラック園で見掛けたという情報を聞くことが出来る。6月以降の話で10日くらい前までよく出入りしていたという。カブトムシやクワガタを熱心に採集していた(ライラックの樹液に甲虫が集まる)。どうも河川敷にいるホームレスの一人らしい。

・サイロ
高台で「黒い塔」らしきものを探した場合、ここより少し行った小山の麓に大きな筒状の建造物を発見する。牧草や飼料を備蓄するサイロで、外面の鉄が錆びて赤黒く変色している。
行政資料などで調べると、かつて一帯に展開していた酪農業者の備蓄庫であったが、高度成長期に業者が倒産し以来長らく放置されていることがわかる。
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ターミナルケアを主体とした施設。過度な化学療法よりも自然静養を選択した者が入設している。

施設内でスタッフや入設者などから次の情報を得ることが出来る。

①大家智弘の現状
大家智広は既に他界している。5月末に突如行方を暗まし施設側が捜索願を警察に出していたが、つい1週間前(探索開始より)に遺体となって発見された。自然公園敷地内のテントの中で大家が倒れているのを周囲に住むホームレスらが見つけ通報した。病院搬送後に死亡が確認、警察によって身元が判明した。
大家の死因は心不全。外傷は無く、発見された現場に他者と争った形跡は無かった。

・病
大家は元々心臓に疾患を抱えており、失踪する直前の時点で担当医師はいつ命が尽きても不思議ではない状況にあることを伝えていた。余命が限られていたことは2年前に施設に入った時点で本人は承知しており、告知の時に別段驚いた様子は無かった。居なくなる前日も特に変わったところは無く、まさに忽然と姿を消した。

②人物像
大家は物静かな人物で普段は部屋に篭って本を読んだりTVを見ていた。専らシャーロック・ホームズに関するものばかりで、いつもは無口な仏頂面であったがホームズの話題には饒舌になった。

・コーヒー
見ていたTVシリーズのホームズがコーヒーを飲む際にいつもブラックに角砂糖を2つ入れるらしく、大家も真似たやり方でコーヒーを飲んでいた。ただ、そういった描写は原作には無いようでホームズがどういった風にコーヒーを飲んでいたか非常に気になっていたみたいだ。
なお、大家は無類のコーヒー好きで担当医からは多くは控えるよう釘を刺されていた。

・奇妙な夢
大家は時折、夢にうなされることがあった。風に(吹き飛ばされるのではなく)吸い寄せられるという奇妙なもので、抗えず引っ張られた先には真っ黒な塔が聳えている。
20年前、赴任先のオーストラリアより帰国した頃の一時期に同じ夢を頻繁に見ていたという。その時期を過ぎてからは一切なかったが、今年に入ってからまた見るようになったと語っていた。

③遺品
大家の遺品の中にソーサーと同系統のマンダリン柄を配したコーヒーカップがある。カップの底はソーサーの溝に丁度納まる。
カップは大家が普段使っていたもので、同じく遺品の中にあるオーストラリア産のコーヒー豆(ラベルに大家が勤めていた会社名が記されている)で淹れたコーヒーを愛飲していた。ソーサー共々、大家が使用しているのを施設の者が見ている。
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バーナード商事を当たると次のことがわかる(適宜<交渉>等)。

◎商社マン
イギリスの陶器メーカーと取引を結んだのは「大家智広(おおや・ともひろ)」という人物。大家はシャーロック・ホームズの熱心なファンで、実は輸入した製品は海外のホームズもののTVドラマで使用されたティーセットと同じもの(量産品)。

大家は2年前、55歳で社を早期退職(この会社の定年は60歳)している。元々心臓に持病を抱えており、一人身だったこともあって療養施設に入って静かに余生を暮らすと周囲に語っていた。その施設は探索者の居る街にある。

・事故と商談
大家は20年前、オーストラリアに赴任していた。商談に向かう際に彼が搭乗したセスナが計器のトラブルからグレートディバイディング山脈の砂漠に不時着、悪天候が重なり3日間音信不通となる。天候回復後、幸いにも大家は無事救助された。不思議と大家に衰弱した様子は無く入院はせず、それどころかその数日後には予定していた商談をまとめた。

商談の当初の予定では、経営不振に陥ったコーヒー農園を買い上げリゾート地化する内容であったが、大家はこれを急遽取り止め農園に資金を投入し再建するプランに変更した。これは大家の独断で社内外から反発を招いたが、結果的に農園で生産された良質なコーヒー豆を専売することで社に莫大な利益をもたらした。

この功績が認められ大家は帰国すると大幅な昇進で迎えられたが、本人はオーストラリアでのこと…とりわけ事故があってから商談に至るまで、をよく覚えていないと語っていた(同僚はとぼけていると解釈している)。

→甲虫
商社の取引先であるコーヒー農園のことを調べると、10年前にこの周辺でカブトムシの固有種が見つかっていることがわかる。もしリゾート地として開発されていたら絶滅していたと推測される。

※このカブトムシは偉大なる種族にとって非常に重要な意味を持つ甲虫種のルーツの1つであった。
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男は病に犯されていた。

余命幾ばくも無くただ死を待つ日々を、趣味に没頭することで紛らせていた。シャーロック・ホームズが生きる支えだった。死ぬ前に1つ願いが叶うしとたら、名探偵が生きた時代を歩いてみたい。そんな妄想が残された時間を過ごす男にとっての唯一の楽しみだった。

人生の終焉が近付くある日、男の願いが成就することになる。昔、オーストラリアで遭遇した事故による奇妙な体験が布石となり、イス人が彼の肉体に憑依した。男の魂は過去に飛び、彼が思いを馳せたヴィクトリア朝のロンドンに暮らす肉体に宿った。

憧れの時代と街に男は幸福感で一杯だった。唯一、不満があるとすれば嗜好していたコーヒーの味が・・・
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舞台は現代日本。7月の終わり。探索者が馴染みの喫茶店、雨月珈琲堂を訪れるとマスターの「雨月秋成(うげつ・あきなり)」からある物を見せられる。

それは唐草に大きなバラのような花を配した絵柄の白磁の小皿。花弁の赤や茎の群青、葉の緑の色合いが淡くくすんでいてエキゾチックな印象を受ける。形状からカップソーサー、少し知識がある者なら中央に溝があることからカップと対をなすものであることがわかる(単品はカップを置く溝が無いものが多い)。

ソーサーの裏側にタグテープ(よくノートの区分けで使われる具合の)が貼られており、定規で引いたような線を組み合わせたギザギザした筆致で「please be delivery」と書かれている。

ソーサーは店のものではなく、今朝開店前にチェックした郵便受けに入っていた。

「それと、関係するかわかりませんが…」

雨月はそう言うと、ソーサーの隣に数枚の紫の花びらを置く。郵便受けの周りに落ちていたもので、ライラックの花弁(必要なら<生物学>)。ライラックの開花は通常4~5月で時期がズレている。

雨月はソーサーに見覚えは無く、メッセージ(?)にも一切見当が付かないという。時期外れのライラックの花共々、不思議がっている。探索者は雨月からこれら「謎」の解明を依頼される。


◎ソーサー
インターネットや専門のカタログ等で調べると、イギリスの老舗陶器メーカー製のものであることがわかる。1800年代後期のヴィクトリア朝に流行した柄(バラ科のマンダリンの花をあしらっている)で、件のソーサーはコーヒーカップと対のもの。他に紅茶用のカップセット、ティーポット、ミルクポット等のティーセットや花瓶などに同種の柄が広く用いられ、量産品としてヨーロッパを中心に流通している。

日本では唯一「バーナード商事」という貿易会社が取り扱っている。


◎ライラック
雨月珈琲堂のある街の自然公園にライラック園がある。5月初旬が花の見頃で、この時期は咲いていない。
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