カテゴリ:シュトラウスの晩餐( 13 )

ケダモノが本当にケダモノに変えられる、というお話です。

今回はグール。クトゥルフ神話の場合、ホラー映画やゲームに出てくるものとは食屍鬼という部分は共通しますが見た目や扱いがちょっと違いますね。立派に神話生物の一角を担っています。

きちんとしたシナリオラインはなく、登場人物が個々に動く形になっています。探索者の行動に合わせて、臨機応変に演出してください。弓末が猪瀬の餌食になる、福田が猪瀬をハントして次のビーストになる、納骨堂の怪物にピッキーズが鉢合わせする、等々。

楽しんでいただけたら幸いです。いあいあ。

プロット!
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福田 フレドリク(ふくだ ─)
男性、21歳。ピッキーズのナンバー2でハーフ。猪瀬がいなくなってからはリーダー風を吹かせている。
STR17 CON16 SIZ17 DEX11 APP10 INT 9 POW10 EDU11 SAN50
耐久力17 db+1D6
技能:運転(自動車)35%、鍵開け50%、機械修理60%、ロシア語70%、マーシャルアーツ20%、キック50%、組みつき50%、こぶし70%、頭突き30%

弓末 美柑(ゆずえ みか)
女性、19歳。猪瀬の彼女。yuzu-pom名義でビーストについて最初にネット上に書き込んだ。
STR 7 CON10 SIZ10 DEX12 APP15 INT12 POW13 EDU14 SAN65
耐久力10 dbなし
技能:言いくるめ80%、聞き耳40%、芸術(歌唱)35%、コンピューター15%、心理学70%、値切り50%、目星60%

犬崎 貴也(いぬさき たかや)
男性、19歳。猪瀬や福田の弟分。悪夢に悩まされ憔悴している。
STR13 CON12 SIZ13 DEX15 APP11 INT11 POW 9 EDU13 SAN38
耐久力13 db+1D4
技能:言いくるめ50%、機械修理35%、聞き耳65%、芸術(歌唱)30%、経理35%、コンピューター35%、値切り40%、目星50%

猪瀬 亮二(いのせ りょうじ)
男性、23歳。ピッキーズのリーダー。「呪い」によってグールの姿に変貌している。
STR20 CON14 SIZ13 DEX15 INT16 POW14
耐久力14 db+1D6 移動9
武器:かぎ爪30%1D6+db、噛みつき30%1D6+牙でいたぶる(1D4)
装甲:火器と飛び道具のダメージを半減(端数切り上げ)
正気度喪失:0/1D6
※技能や攻撃方法など詳細はルールブック「食屍鬼」の項を参照。

納骨堂の怪物
宇佐沢眞殊の死体から樹海に潜むグールどもが抜き出しモルディギアンに捧げた怨念の塊が、神性の力を得て作り上げた化身。モルディギアンに近い姿をしているアルビノの肌をした芋虫状の怪物。陥没した眼窩に目は無いが、霊的な感覚によって事物を察知している。本体は祭壇の棺に入った胎児のミイラで、これを破壊すると消滅する。
怪物は1ラウンドにのた打ちと噛みつきの任意の組み合わせで2回攻撃を行う(両方1回ずつか片方2回)。噛みつきが成功すると怪物は以降の攻撃はのた打ちのみとなる。噛みつかれた者はその時点で1ダメージ、以降は怪物のイニシアチブ毎に体内の消化液によって2、3、4…とダメージが増える。この拘束から抜け出すには怪物の<STR>との抵抗ロールに成功しなければならない。
STR40 CON25 SIZ35 DEX16 INT 1 POW25
耐久力30 db+4D6 移動10
武器:のた打ち60%db、噛みつき30%特殊
装甲:呪文以外のあらゆる攻撃を半減(端数切り上げ)、呪文に対しては通常通りの効果を受ける。
呪文:食屍鬼との接触、呪い、その他ドリームランドや死者に関する秘儀をモルディギアンの力から得ている。
正気度喪失:1/1D10

■呪い
モルディギアンの力を得た胎児が、母親を汚した者に報復する為に掛けた呪詛。宇佐沢眞殊が襲われたカラオケ店の個室は胎児の化身の潰れた目と霊的に繋がっており、猪瀬・福田・犬崎は既に怪物に捕捉され呪いを受けている。

呪いは胎児の意思によって影響が及ぶ。モルディギアンの庇護を受けているとはいえ胎児自体は神性レベルの力は無いので、呪いの対象は常に一人に限られる。呪いの効果が完了すると、胎児は次のターゲットを自らが捕捉している者の中から選ぶ。猪瀬→福田→犬崎の順だが、母親の報復が全て終わる(犬崎への呪いが遂げられる)頃には胎児は当初の目的を忘れてしまう。モルディギアンの傀儡として納骨堂の神を崇める存在=グール、を増やすべく呪いの対象を捕捉している中から任意に選択する。探索者がカラオケ店の個室で異変を察している場合はその餌食になる可能性もある。

呪いの対象者は胎児の化身のPOW25と抵抗ロールを行う。これに失敗すると、肉体が見る見るうちにグールのものへと変化する。筋肉組織が異常に発達し容貌同様の野生の獣のような筋力を得る(<STR>+6)。恐ろしい体験に精神が蝕まれ、意識がある間は1時間ごとに正気度を1D6ポイント自動的に失う。
同時にひどい空腹感に苛まれる。始めのうちは普通の食事で紛らすことが出来るが、欲求が満たされるわけではない。正気度の減少と共に飢えは強くなり、調理のされていないもの、牛や豚の肉や魚などの生もの、とりわけ腸や内臓など血生臭い部分、と段階を経て、最終的に正気度を全て失うと人間の屍肉を求めるようになる。人の肉を食すことで人間だった意識も完全にグールのものとなり、呪いは完了する。

呪いが完了する前に途中で止まった(胎児が破壊されるなどして)場合、対象者に正気度が残っているのなら人間の姿に戻るチャンスがある。<幸運>ロールを行い成功することで元の身体を取り戻す(<STR>も元の値に直す)が、失敗するとグールの姿のまま精神は人間という中途半端な状態になる。ともあれ、化物の姿で普通の生活を送ることが出来るとは到底考えられない。

呪いを受ける可能性のある胎児に捕捉された者は、その兆候が現れる。睡眠時に<聞き耳>ロールを行い成功すると、カラオケ店の個室に赤子の泣く声が不気味に響く(犬崎が悩まされているものと同様な)夢を見る。夢を見る毎に正気度ロールを行う(0/1)。
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【樹海】
産業道路の眼下に位置する、木々が鬱蒼と茂る森林エリア。深夜にこの付近を訪れた場合、<POW×1>に成功すると赤子の泣き声を耳にする。泣き声はすぐに消える。辺りを探っても該当する発信源は見つからない。<聞き耳>で、森の奥から聞こえた感じがする。声を聞いた者は正気度ロール(0/1)。

道路に沿う崖下に狭路ながら山道(入口に一般者の侵入の禁止と自殺を踏み止まらせる内容を記した看板がある)があり、そこを通れば大穴があったとされる石碑まで1時間ほどで到達する。
石碑(巨大な岩)には文字らしきものが刻まれているが年月による風化によって一見すると何が書かれているか読み取ることは出来ない。<日本語>及び<歴史>に成功することで、風土記にあった内容と同様な情報(黄泉比良坂=亡者が通る道を封じた旨)が記されていることがわかる。さらに<アイデア>で、意味の通らない独特な節回しが所々にあることに気が付く。これらを踏まえて<クトゥルフ神話>に成功すると、その文面が呪術的文言であり、この岩が神話に関連する何かしらの霊的スポット(神殿のような)を塞いでいるという推察に至る。但し、具体的なことまではわからない。

・ドア
石碑のある場所で調査するなど10分以上留まった場合、<POW×2>に成功すると、ある幻覚を見る。巨岩が真っ黒になり、その中心にこの場所に不釣合いな洋風の扉が出現する。アミューズメント施設にあるカラオケ店に行っているならそれがそこの個室のドアとそっくりであることに気が付く。ドアは鍵が掛かっているようでノブを捻る事が出来ない。ドアを無理に開けようとするか、数秒が経つと元の現実に戻る。

この場所で誰かが猪瀬が所持していた鍵のネックレスを携帯している場合、<POW>のロールを行うことなくここに居る全員の目の前にドアが出現する。鍵穴にネックレスの装飾である「鍵」を挿し捻ると施錠が外れる音がし、ドアを開くことが出来る。ドアは「門」で、地中にある「納骨堂」へと通じている。往来にはMPと正気度を1消費する。

【納骨堂】
「門」を通過すると、あるエリアに出る。肌を刺すような異様な冷気に包まれている。暗闇なので視界を確保するには灯りを点す必要がある。辺りを岩肌に囲まれ、頭上は頂点まで光が届かない程高く、陸上トラックほどの広さは優にあるスペース。中心部に四角く平べったい石が台形に積み重なった祭壇のような人工物がある。

探索者のすぐ背後には目の無い頭部と四肢の無い胴体の奇怪な鬼神の石像(2メートル程の)が壁に埋もれている。カラオケボックスで幻覚を見た者は、その時目にしたものと同じであることに気が付く。この像は地下世界に棲むグールが彼らが崇拝する神モルディギアンを模して作ったもので、こちら側の「門」になっており、触れると石碑の前に出る。

石段に近付こうとすると、赤子が泣く声が響く。声のする方を見ると、頭上の暗がりを黒い影が壁伝いに這い蠢いていることに気が付く。陰影は脈打つように仰け反ると、探索者の眼前に降って来る。
そいつは巨大な胎児のような姿だが眼窩が深く陥没してその部分が不気味に黒ずんでおり、手足は無く胴から下が芋虫のような長い尾になって地面をのた打つ。全身の皮膚は白く薄らいでいて青い血管を浮き立たせている。どことなく石像のモデルに近い印象を受ける。正気度ロール(1/1D10)。

怪物…宇佐沢眞殊の子供は、この場に「呪い」の対象が居る場合、優先的に襲う。そうでないなら、ランダムに襲い掛かる。言葉が通じる相手ではないので<説得>は意味をなさないが、母親を弄んだ相手(猪瀬、福田、犬崎)を怪物自らが殺せば本能的に満足し「呪い」は止むかもしれない(そうしたことをシナリオのゴールに設定しても良い)。
怪物を殺せば「呪い」は無くなる。怪物の背後のピラミッド型祭壇の頂上にはグールの餌食となった者らの無数の骨に囲まれた小さな石棺があり、その中にグールどもが宇佐沢眞殊の死体から取り出した胎児のミイラが納められている。ピラミッドはドリームランドのモルディギアンの神殿とシンクロしていて、母親の無念が凝縮したミイラは“納骨堂の神”の力を得て恐ろしい怪物を顕現させている。ミイラを破壊すると、怪物はどろどろに崩れ消滅する。また、怪物の耐久力が無くなれば、ミイラも塵となってしまう。<クトゥルフ神話>で、これらのこと(怪物の撃退方法)に関して何かしらヒントを与えても良い。

探索者側の戦力が怪物よりもあからさまに勝っているなら、グールを何体か敵として出現させても構わない。また、怪物を撃退した後もこの場所を調査しようといつまでも留まった場合、グールによる「脅かし」を行っても良い。
胎児の怨念と呼応した「ドア(=門)」は「呪い」が消えると無くなるので、以降は人間が石碑側から「納骨堂」に進入することは出来なくなる。グールどもは現世と夢の世界の狭間にある自分達の礼拝堂には自由に往来する(大穴を封じたとされる石碑は実は彼らの行動に対してなんら効力を持たない)。

◎報酬
このシナリオの参加者は1D4ポイントの正気度を得る。どういう形にせよ、「呪い」の拡大を食い止めることに成功した場合はさらに1D6ポイント、それが胎児の化身を消滅させたことによるのなら1D6ではなく替わりに1D10ポイントの正気度を獲得する。猪瀬=グールを倒したのなら、野放しの場合に出るはずだった被害を防いだことで1D3ポイントの正気度が加算される。
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猪瀬亮二は現在、「呪い」によってグールに姿を転じ息を殺して街に潜んでいる。このシナリオがどう結末を迎えるにしろ重要なポイントとなるのが猪瀬亮二=ビーストを見つけ出すことである。

【賃貸マンション】
猪瀬の暮らしていたマンション。
部屋内部は一見几帳面に整理されているように思えるが、(家人の不在に伴い)ガラス窓やフローリングに埃がうっすらと膜を張っていたり、冷蔵庫の中に2週間程度期限の過ぎた食材や牛乳等の飲料が入っている。

頭の回る猪瀬は、自分達が行った反社会的行為の証拠(例えば襲った女の画像など)を残すようなヘマはしないので、部屋を探ってもそういったことに関する情報を見つけることは出来ない。しかし、猪瀬が以前勤めていたホストクラブのあった場所(現在は空きビル)や、彼がインターネットの株式投資で収益を得ていること、2週間前(4月10日)に取引タイミングを逸して多額の損失を被ったこと、などが所持品やPCを調べるとわかる。
なお、株の損失は猪瀬がグールに変貌してそれどころではなくなり放置した為である。損失を出したことを、猪瀬が「逃げた」理由と思っている者も居る(猪瀬と同様な金儲けをしている、主に闇社会に通じる者ら)。

・クレーム
猪瀬の部屋の隣人に聞き込みを行うと、今月上旬から中旬に掛けて夜中に猪瀬の部屋から奇声が響いたという情報を得る。男の絶叫する声で、深夜に断続的に数回、3、4日続いたという。
また、4月7日の夜11時頃、チャイムが鳴り出るとドアの前に猪瀬がおり、赤ん坊の泣き声がうるさいと怒鳴られた。この住人は一人暮らしで、フロア及び猪瀬の部屋の上下階に乳児や小さな児童を持つ家庭は無い。その時は暫く話した後、猪瀬が自身の勘違いを認め謝罪して去った。

【空きビル】
猪瀬は現在、自分が勤めていたホストクラブがテナントとして入っていた部屋に身を潜めている。姿がグールと化して数日はゴミ捨て場から残飯などを漁り飢えを凌いでいたが、「屍食鬼」の本能から死体を食したい欲求に駆られている。飢餓状態の猪瀬は、人間が侵入したことに気か付くと、殺して食料を確保する目的で一心不乱に襲い掛かる。
猪瀬は人間の死肉を食すと、自分がそうした化物となったことを認識し、身も心も完全なグールとなる。そうなった後もかつて猪瀬亮二だったグールはこの場所を(表沙汰になっていなければ)生活拠点として利用する。

猪瀬が完全なグールと化すか死んだ場合、次にビースト=グールに変貌するのは福田である。これは、猪瀬に向いていた「呪い」の矛先が福田に変わった為で、福田の次は犬崎の番になる。犬崎もグールになるか死ぬと、「呪い」のターゲットはカラオケ店の個室で異変を察した中からランダムで選ばれることになる。

・鍵
猪瀬は鍵型の装飾の付いたネックレスを身に付けている。宇佐沢眞殊がビショップから購入したもので、「呪い」を掛けた張本人が居る場所に至る為のアイテムである。
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◎福田フレドリク
ピッキーズのナンバー2で、リーダー不在のグループを実質仕切っている。スラブ系民族の血が混ざるハーフで、巨躯で強面の見た目同様、直情的な性格をしている。考えるよりも先に手が出る。
現在、「ハント」と称してグループの男どもを引きつれ街をうろつきビーストを探している。面白半分にビーストを捕らえてネット上で晒しものにすると公言しているが、本当は弓末につきまとうストーカー野郎を締め上げることが目的である。彼は弓末の証言(後述)からビーストを人間だと思っている。猪瀬が居なくなった後、肉体関係を持った弓末に新しい彼氏(と彼は思っている)として良い格好がしたいというのが本音である。
以前は従っていた猪瀬に対する福田の現在の感情は、今戻ってこられても困る存在であり、このまま消えて欲しいと願っている。彼の前で猪瀬の話をするとあからさまに嫌な顔をし、追求するようなことがあれば口より腕力に訴える。もし、福田が猪瀬の現状を知った場合は「化物」を葬ろうとするし、その為の協力は惜しまない。

このシナリオの発端となった事件に関与している。猪瀬の後に宇佐沢を弄んだ一人である。猪瀬がこの時奪った鍵のネックレスのことを知っており、それを付けているビーストの姿を彼が見ることがあれば「化物」が猪瀬であることに気が付く。
福田にも猪瀬と同様の「呪い」が掛かっているが、鈍感な為に兆候に気が付いていない。猪瀬が完全にグール化するか死んだ場合、次のビーストになるのは福田である。

◎弓末美柑
ピッキーズの女性メンバーの一人で、リーダーの猪瀬と付き合っていた。現在は福田と肉体関係にあるが、弓末本人は(好みではない)福田と交際しているつもりは一切無い。グループの中心に居たいヒロイン志向の強い女であり、権力者に擦り寄る技術を身に付けている。福田との関係はピッキーズでの自分の地位を守る為の手段として割り切っている。
ビーストに関してネット上に最初に書き込んだ「yuzu-pom」は弓末である。直後に妙なもの(ビースト)に狙われていると感じ、福田に相談した。この時に肉体関係を持ち、福田との関係が猪瀬にバレることを懸念して「yuzu-pom」のアカウントでの書き込みを止めた。

弓末は自分に危険が及ぶと感じた場合、福田を始めとしたピッキーズの男らに頼る。自分に不利なことがあるとまず最初に白を切るか人のせいにする。また、涙や誘惑など女の武器を使うことに躊躇は無い。後ろ盾(福田など)が無い場合は手の平を返し、助かりたい一心で知っていることをすんなり白状する。

・ストーカー
SNSにビーストについて書いた以降も数回、怪しい影を見たり視線に気が付いた。自宅の他、ネイルサロンやカジュアルショップ、アミューズメントビルなど普段行く場所の傍で気配を感じたので、自分がターゲットになっていることは間違いない。福田に話し彼が大々的に「ハント」を公言して以降はそういった体験をすることは無くなったので、現在は安心している。
ビーストの姿形を見たのは最初の一回で、それもちらと目に入った程度なので今となっては記事にしたような怪物は気のせいだったかもしれない。人間の、ストーカーの仕業に違いない。

・猪瀬
4月8日に喧嘩して以降、猪瀬とは一度も会っていない。この頃、猪瀬はひどくいらついている様子だった。寝不足なのか目に隈を作り、爪を噛んだり頭をかき毟ったりしていた。理由を聞いても何も無いとしか答えないので、心配になって彼の部屋に押しかけたところ逆上されて締め出された。このことが原因で、弓末の猪瀬に対する気持ちは一気に醒めた。

・ネックレス
猪瀬が鍵型装飾のネックレスをしていた。二月の末頃に、「最近見つけたお気に入り」と言って自慢していた。ネックレスを付けた猪瀬と(ベッドの上で)二人で写る画像を所持している。ビショップを当たっていれば、店で扱っているものと非常に似ていることに気が付く。

・デートスポット
猪瀬と二人だけの秘密の場所がある。猪瀬が過去にホストとして働いていた店舗で、現在は空き屋になっているビルの一室。猪瀬はホスト時代にくすねたその部屋の合鍵を持っており、度々二人の密会に利用していた。

弓末は展開次第(探索者の話に不安を覚え猪瀬を探す行動に出る等)でこの場所に行くかもしれない。一人で向かった場合、飢えたビースト(猪瀬)の犠牲になる。

◎犬崎貴也
猪瀬と福田の舎弟。アミューズメント施設内のカラオケ店で働いている。猪瀬の指示で宇佐沢を騙し複数人で襲った中の一人。犯行には勤めるカラオケ店の個室が使われ、証拠が残らないよう隠ぺい工作を行った。
神経質な犬崎は「呪い」の影響から、毎夜、悪夢に魘されている。猪瀬の現状を知っており、わが身に起こっている「呪い」との符合を疑っている。精神をすり減らし、常に怯えた態度を示す。「ハント」には参加せず、アルバイトを体調不良を理由に休み現在は恐怖から自宅に引きこもっている。
犬崎から情報を聞き出す最も簡単な方法は、後ろめたさを指摘しほんの少し脅してやることである。

・ビースト
猪瀬がいなくなり、弓末が奇妙なストーカーを幾度か目撃した頃、犬崎は店の周囲をうろつく「化物」の存在に気が付く。裏手の通用口だった場所で、後に出来た隣接マンションや駐車位置などの関係で現在は使われていないデッドスペースである。猪瀬が「お忍び」で女を店に連れ込む時などに利用していた(宇佐沢もここから個室に連れて来られた)。
そいつは、シルエットこそ人間に近かったが、皮膚を毛が覆い、脚には蹄があった。上半身裸で首から鍵型装飾の付いたネックレスを下げており、犬崎はそれに見覚えがあった。また、履いていたボトムスは猪瀬が好んで身に付けていたものと同じだった。
「化物」の後をつけると、そいつは空きビルの中に入って行った。このビルは猪瀬が昔勤めていたホストクラブがあった場所である。

・悪夢
暗闇に赤子の泣き声が聞こえる。辺りに反響するので、そこが囲まれた空間であることはわかる。次第に闇に目が慣れて、おぼろげながら状況を把握する。大きなモニター、音響、テーブルにソファが見覚えのある配置で並ぶ。そこは自分が勤める店の個室。赤子の声はボリュームを増し、不協和音となってこだまする。

・検索
彼の家のPCや携帯電話を調べると、宇佐沢眞殊の自殺に関してネット上で閲覧していることがわかる。関連して自殺スポット(樹海)についても調べている。

犬崎が悪夢を見るようになったのは、1週間前(探索開始より)からで、ビースト騒ぎが自分達が過去に犯したこと…宇佐沢を襲った、に由来していると薄々気が付いている。彼の恐怖を刺激することで、過去に犯した「罪」を吐露するかもしれない。

・罪と罰
2月25日、猪瀬より連絡があり、指示通りに裏口からカラオケ店の個室に女…宇佐沢眞殊を招き入れた。芸能プロダクションに女の知人(彼女がファンのアマチュアバンド)を紹介するという設定で、福田が事務所関係者を装った。女に酒を飲ませ、酔った所を猪瀬が襲った。その後、猪瀬から作戦が上手くいった「ご褒美」に女を頂戴し福田と二人で楽しませてもらった。猪瀬は女が持っていた鍵型のネックレス(意中のバンドマンへのプレゼントらしい)を戦利品として奪い、上機嫌で身に着けていた。
後に、宇佐沢眞殊が妊娠を苦にして自殺したことを知った。夢に見る赤子の泣き声は、あの時出来た子供に違いない。自分は宇佐沢眞殊の霊に取り憑かれているのだ。
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男13、女8名で構成された集団。学生やアルバイト(主に不定期就労)、無職の十代後半~二十代前半の若者達で、繁華街を中心に主に遊び目的で屯っている。暴走族やチンピラというよりは身形に頓着したり男女間の恋愛(肉体関係に直結する)や表面的な付き合いを重視するチャラついたグループである。
モラルを軽視した言動が目立つが、狡猾で裏社会とも付き合いのあるリーダー・猪瀬と、ハーフで強面のナンバー2・福田の威光から周囲は煙たがりながらも目を伏せている現状。

ピッキーズに関しての重要な情報は、このシナリオの発端となる彼らが過去に犯した罪と、その主犯である猪瀬亮二の所在である。それらの情報は主要メンバー(後述)を当たることで得ることが出来る。

■罪
2月25日の正午過ぎ、街をうろついていた猪瀬は宇佐沢眞殊の姿を見つける。宇佐沢は猪瀬が行きつけの飲み屋のアルバイト店員であり、互いに面識があった。猪瀬は少しからかう遊び気分で宇佐沢に声を掛け、ホスト業で培ったスキルを活かし言葉巧みに話を聞き出した。
宇佐沢がファンのロックバンド(彼女が通う大学のサークル)のライブが翌日にあり、特に好意を寄せるボーカルの男性に渡すプレゼントを先程購入したという。今日が丁度給料日だったので奮発した、と楽しげに語る宇佐沢を見て猪瀬は、無性に「この女を踏み躙りたい」と思った。
猪瀬は、芸能プロダクションに勤めるホスト時代の後輩にバンドを紹介しても良いと(それらしき名刺をちらつかせるなどして)嘯き、電話先の仲間にその人物を偽らさせアポが取れたふりをして、バンドの詳細を彼に伝えるよう宇佐沢に持ちかけた。彼女はなんら疑うことなく誘いに乗り、猪瀬は宇佐沢を「待ち合わせ場所」に連れ出すことに成功した。
自分の息の掛かる個室で猪瀬は宇佐沢を襲った。その後、企てを手伝ったメンバーにも同じ楽しみを提供した。猪瀬は戦利品として宇佐沢が購入したプレゼント…鍵型の装飾の付いたネックレスを頂戴した。

◎ピッキーズメンバー
主にアミューズメント施設で屯しているチャラついた若者達。現在、福田の指揮の下、男性陣は「ハント」に半ば強制参加させられており、女性メンバーの多くは退屈な様子である。
情報を聞き出すには、彼(彼女)らの軽く薄っぺらいノリに合わせることが効果的である。

・猪瀬と犬崎
闇社会にコネのある猪瀬は裏の情報を駆使して、インターネットの株トレードでかなり儲けているらしい。今回の失踪は、そうした危険な金儲けのトラブル絡みであると思っている者は少なくない。
また、男性メンバーは猪瀬の女癖の悪さを知っており(よく使い走りの犬崎を使ってカラオケボックスのゲストルームに女を連れ込んでいる)、女性関係が恋人の弓末にバレて身を隠していると考える輩もいる。事実、居なくなる直前に弓末と喧嘩していたようだし、ここのところ犬崎が姿を見せない(カラオケ店のアルバイトも休んでいる)のは猪瀬を匿っているからかもしれない。

・福田と弓末
猪瀬の失踪があってから福田がグループ内で権勢を振るうようになった。ちゃっかりした所のある弓末は猪瀬から福田にすっかり鞍替えしたようで、よく傍に居ては色目を使っている(女性メンバーは弓末をあまり良く思っていない)。福田も満更ではなく、現在行っている「ハント」は世間的に目立つことをやることで弓末にいいところを見せたい為に違いない。
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【アミューズメント施設】
繁華街にある複合型のレジャービル。カラオケやゲームセンターの他、ボウリングやビリヤード、フリースロウゲームなど比較的簡易で気軽に楽しめるスポーツフロアが充実している。客層は若者が多く、ピッキーズの連中もよく屯している。

◎一般客(常連)/スタッフ
ピッキーズのメンバー以外で彼らについて街で最も詳しく知っている。メンバーの目を気にし店内ではあまり話をしたがらない。

・リーダーとナンバー2
リーダーの猪瀬亮二は一見温和な雰囲気だが何を考えているかわからないという。ナンバー2で腕っ節の強い福田フレドリクが揉め事があると先頭になって(主に腕力で)対処し、猪瀬は騒ぎが大きくならないようアフターフォローに回る。結果的にピッキーズのメリットになることが多く、揉め事自体が猪瀬が仕組んだことと勘繰る者もいる。

・彼女
猪瀬はメンバーの「弓末美柑(ゆずえ・みか)」と付き合っている。「シトラウスピッグメンズ」のシトラウスはシトラス=柑橘を捩ったもので、彼女の名前に由来している。

・舎弟
猪瀬と福田に最も可愛がられているメンバーは「犬崎貴也(いぬさき・たかや)」で、この施設のカラオケでアルバイトをしている。

・失踪
今月中旬に猪瀬が突然行方を暗ませた。借金があって逃げたという噂もあったが、メンバーはおろか福田や犬崎、付き合っていた弓末も理由がわからないようで、暫く福田を中心に猪瀬を探していた。
最近は猪瀬が居ない事に慣れたようで、福田がリーダーに昇格しピッキーズを取り仕切っている。福田は猪瀬とは違い直情的な性格で、以前に増してピッキーズがすき放題やるようになった。「ビースト狩り(ハント)」もその1つで、大きなトラブルが起きることを心配している。

【カラオケボックス】
アミューズメントプラザ内にある店舗の1つ。猪瀬らの弟分である犬崎が勤める。店員から次の情報を得ることが出来る。

・欠勤
犬崎が1週間前(探索開始から)からずっと休んでいる。毎日電話での連絡があり、風邪が長引いているとのこと。声の様子から日に日に憔悴して行っていると感じるという。
1週間前、犬崎は遅番で深夜の担当だった。この時一緒だった店員の話では、休憩から戻った犬崎の様子がおかしく、顔面蒼白で怯えるように震えていた。何かあったのか聞いても、なんでもないと返された。翌日から休んだので、この時から具合が悪かったと思っている。
犬崎は休憩時間はよく店の外のデッドスペース(元々機材搬入の為の通用口だったが隣に出来たマンションの関係で本来の用途で使用できなくなった)で煙草を吸っている。

→通用口だった場所を調べても特に情報となるようなものは見つからない。

・ゲストルーム
音響設備や調度品・インテリア等のグレードが他ルームより上で、比例して使用料金の高い設定の個室がある。一般客より年齢層が上だったり、社会的にある程度の身分のある者(経営者、政治家、芸能人など)、会社関係の接待目的の利用が主である。
この個室を犬崎の伝手で猪瀬が使用することが度々あった。女を連れ込んで如何わしいことをしているようで、店側は迷惑に思っているがアミューズメント施設を拠点にしているピッキーズと揉め事を起こしたくないので口を出せないでいる。

→幻覚
個室に入った場合、<POW×2>を行う。これに成功すると、電源が入っていないはずの室内の大画面モニターに「何か」映像が浮かび上がるのを目撃する。
それは、奇妙な形をした石像。一見すると人の姿に近いが頭部に目はなく、また胴体に手足が付いていない。<クトゥルフ神話>で、この像がグールが崇める神性‘モルディギアン’を模っていることに気が付く。モルディギアンは全ての死者を食らう存在とされ、年を経た巨大グールとも他の神性の眷属の変異体とも言われる。
幻覚はすぐに消える。これを見た者は正気度ロール(0/1)。さらに、<幸運>ロールを行い失敗すると、このシナリオの元凶である存在に捕捉され、「呪い」のターゲットになる可能性がある。赤子の泣き声が一瞬聞こえるが、辺りを見ても声の主はどこにも存在しない。

室内からは他に情報となるものは見つからない。

店員に個室に関しての異変を尋ねると、利用した客の中で時折赤ん坊が泣くような声を耳にする者が居るという話を聞くことが出来る。ここ2週間くらいに何件かあった。他の部屋に子供連れが居たのか、誰かがペットを無断で持ち込んでいるのかもしれないと超常現象的なことを否定するように答える(風評被害を避ける為に)。

像に関して調べれば、エジプトやマヤ・アステカのピラミッド周辺、古代ローマの戦場跡などでこれとよく似たものが出土していることがわかるかもしれない。但しどの情報源もオカルトじみた内容で学術的な信憑性は無い(オーパーツのような扱いで紹介されている)。
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【ボランティア】
宇佐沢眞殊の死体を発見したのはボランティアグループと市の担当職員である。ボランティアは林業従事者や登山サークルに所属する学生・社会人など山歩きに慣れた者らで構成されている。山林の清掃と管理が主な活動で、「樹海」の見回りもその一環。

・状況
宇佐沢眞殊の死体は石碑のすぐ傍で見つけた。仰向けで、腹部で両手を組んだ状態だった。衣類の乱れや目立った傷は無く腐乱の兆候も見られかった為、初めは眠っていると思ったと発見者は語る。死体の近くにあったポーチの中に携帯電話と小額の入った財布があり、身元が判明した。遺書の類いは所持していなかった。

路肩からの飛び降りが原因で、露出した岩肌で死体が見つかる等は過去にあったが、そのほとんどが樹海手前であり内部で死体が発見された今回のケースは珍しいという。樹海内に自殺行為を裏付ける証拠(遺書など)は残されていても死体が見当たらないことが非常に多く、皆そのことを不思議がっている。

【警察】
宇佐沢眞殊の死に関しての調書。警察関係者が情報源となる。

・遺書
所持していた携帯電話から身元を割り出し、宇佐沢が一人暮らしをしていたアパートの自室を捜索したところ、遺書らしきものを発見。破ったノートの一枚に、妊娠がわかりそれを苦に死を決意し「樹海」で命を絶とうと考えている旨と、両親に対する謝罪が綴られていた。部屋には妊娠の簡易検査器材があった。妊娠した時期や誰が相手であったか特定する情報は無かった。

・検死
事件の可能性も考慮し司法解剖が行われている。死亡したのは発見時より24時間以内。死亡原因は低体温による心肺停止。胃の内容物はほぼ空の状態で、長期間食事を取っていなかったと推測される。外傷は無く、争ったり遺棄された等の形跡も見受けられず、本人自らが発見された場所に至り他者の手を借りず死亡したものと思われる。
下腹部切開により子宮周りを調べたところ妊娠・堕胎の痕跡は見られなかった。このことから、彼女が死を決意した動機は勘違いによるものと警察は結論付けた。

【遺族】
宇佐沢眞殊の実家はこの街の県外にある。彼女の遺品は全て両親が引き取っている。娘の死が自殺ということで相当なショックを受けている夫婦から情報を得るには交渉系技能を駆使する必要がある。

・予兆
母親は娘と普段は主に週末に電話でやり取りをしていた。死亡する前の土曜日も会話をしているが(それまで同様に)特に変化に気が付くことは無かった。思い当たることといえば、大学が春休み(2月末日~4月10日)に入る前に帰省の日程を尋ねたところ、アルバイトを理由に今回は帰らないと伝えられた。これが「兆し」だったかもしれない、とひどく後悔を滲ませて語る。

・日記
宇佐沢眞殊は手帳に日々の予定を記していた。その内容から、彼女が街の居酒屋でアルバイトしていたことがわかる。2月25日に「給料日」とその横にハートマークが書かれている。その日以降、記述は無い。

・レシート
死亡時に所持していた財布の中にレシートが入っていた。2月25日の日付で1万8000円(税別)の買い物をしたことがわかる。品名は記されていない。レシート上部に王錫を模したロゴマークがあり、<知識>か調べれば繁華街にある「ビショップ」というアクセサリーショップのものであることがわかる。

→「ビショップ」を当たると2月25日に販売した該当する商品を突き止める。鍵の形をした装飾の男性向けネックレス。プレゼント用にラッピングし、若い女性が購入したのを店員が覚えている。

【大学】
宇佐沢眞殊の通っていた大学の同級生から話を聞くと、次のことがわかる。

・状況
宇佐沢は明るく人当たりも良く、「うさこ」と呼ばれて慕われていた。仲間内でのカラオケやショッピング、レジャーなどに積極的に参加していたが、春休みに入る頃を境にそうした集まりに顔を見せなくなった。SNS上やメールでのやり取り(他愛ない内容である)はあったので、皆彼女が帰省していると思っていた。そうしたやり取りも徐々に減り、宇佐沢が死亡する直近には一切無くなっていた。春休みの終わる1週間を切っても姿を見せるどころか音沙汰が無いので心配していた矢先に「うさこ」の死を知った。

・ファン
宇佐沢は大学の軽音楽サークルに所属するロックバンドのファンで、特にボーカルの男子学生に執心だった。春休み直前の2月26日に大学の講堂を借り切ったこのバンドのライブがあった。宇佐沢はそれを以前より楽しみにしていた様子(バイトの給料でプレゼントを買って渡すと息巻いていた)だったが、当日になって一緒に見に行く約束をしていた友人に急用で行けなくなった内容のメールがあり彼女は会場に現れなかった。

→ボーカルの男子学生は宇佐沢のことを詳しくは知らない。学年も学部も違い、ライブ会場で見掛けるファンの一人という認識である。彼は普段からパンク調のファッションで、多数のアクセサリーを身に着けている。そのほとんどは「ビショップ」で購入した物で、ファンからプレゼントされることもあるという。

【アルバイト先】
宇佐沢は週に2~3日、繁華街の居酒屋でアルバイトをしていた。従業員から次の情報を入手できる。

・無断欠勤と退職
2月25日は宇佐沢の出勤日であったが時間になっても来ず、その日は連絡が取れなかった。翌日、彼女から電話で欠勤を詫びる言葉と、仕事を辞める旨が伝えられた。それまで宇佐沢は休んだり遅刻したことは一度も無く勤務態度もまじめだった。

・トラブル
以前、酔った男3女2人のグループが店内で騒ぎ出し、注意した店員に逆上した男らが暴れたことがあった。彼らはピッキーズのメンバーで、警察沙汰になりかけたところを駆けつけたリーダーの猪瀬が男らを嗜め店に謝罪をしその時は穏便に済んだ。2月初旬の話で、以降ちょくちょく猪瀬がメンバーを引き連れて店に客として来るようになった。
ピッキーズを従業員の誰もが快くは感じておらず、他県出身で街のことを詳しくは知らない宇佐沢が彼らの接客を任されることが多かった。人当たりの良い宇佐沢の性格もあってか最初のようなトラブルが起こることは無かった。宇佐沢本人もピッキーズに関し特に偏見を持っている素振りは無かった。
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【資料】
風土記など街の歴史資料に噂されている「ビースト」の姿を思わせる獣人に関しての記述がある。蹄と鉤爪のある半人半獣の化物が集落外れの大穴を出入りし、墓を荒らして死体を持ち去る、という話が記されている。化物は地獄に落ちた亡者の成れの果てで、穴は化物の住処である地獄に通じている。
穴は集落の外れの峡谷にあったが、天変地異(過去にあった自然災害と思われる)によって塞がれた。集落の人々は神官を呼んで祈祷を執り行い、穴のあった場所に慰霊碑を設けた。以来、墓荒しが頻繁に起こることはなくなった。

・碑
慰霊碑は現存し、資料に写真が掲載されている。辺りを木々に囲まれた場所に、巨大な岩がある。岩には文字らしきものが刻まれた跡がある。解説によれば、十六世紀中頃に建造されたもので、黄泉比良坂(よもつひらさか;神道で死者の世界に通じる道)を閉ざした旨の神事に則った文言が刻まれているとある。

・埋葬業
集落の人々が死体の処理を請け負っていたという仮説が記されている。当時の統治者(この街のある一帯を治めていた)の史料から、合戦や疫病・飢饉などで多くの死者が出ており埋葬場所とそれを請け負う人員を在野の集落に求めていたことがわかっている。集落の規模と墓場に足る土地面積等から察して、ひょっとすると大穴を墓穴代わりに利用していたかもしれない。墓荒しの話は、死体の数を誤魔化す方便の可能性がある、と述べている。

・現在
峡谷付近は貨物搬送ルートとして開発された産業道路が走っている。道路外は切り立った崖や急斜面な為、行政は山林への一般人の侵入を禁じている。石碑のある個所も同様である。

【インターネット】
ネット上で大穴のあったとされる個所の情報を探ると、石碑のある周辺が自殺スポットになっていることがわかる。木々が鬱蒼と茂る様を富士の樹海に例えている。特に方位磁石が狂う等の話は無いが、こちらの「樹海」は死ぬと死体が見つからないという。実際に「樹海」で遺書や靴・衣類、縄紐や練炭を使用したテントなどが見つかっているが、死体を発見した報告はそれら遺品(?)の数と比べると極めて少ない。

・死体
4月7日、「樹海」で女性の死体が見つかった。定期的な見回りに訪れた行政職員とボランティアらが石碑の傍で発見。地方新聞やローカルニュースに小さく取り上げられており、死んでいた人物はこの街の大学に通う「宇佐沢眞殊(うさざわ・まこと)」19歳、一人暮らしの自室から遺書らしきものが見つかっており自殺の可能性が高いと報じた。宇佐沢眞殊に関する詳細は後述。

【運送業者】
産業道路を頻繁に往来する物流トラックのドライバーから奇妙な話を聞くことが出来る。

・泣き声
夜間、走行中に赤子の泣き声が聞こえる。時間的にも場所的にも子供連れの親子が居るような個所ではないし、勿論車中に赤子を乗せているはずもない。泣き声を耳にするのは「樹海」の傍を通過する時で、複数人が同様のことを言う。
必ず聞こえるわけではなく、時間に余裕が無かったりスケジュールが過密な場合などが主で、精神的に過敏になっていることが原因と自覚する者が多い。聞いた話を真に受け自分もそう感じると思い込んでいるだけと分析する者も居る。
ここ2、3週間の話である。
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【繁華街】
ビーストの目撃談が多い地点(繁華街及びその周辺)での主な情報元。

①若年層
学生や十台半ば~二十台前半の街に遊びに出ている者達が一番情報を共有している。但し、どれもネットに書かれている信頼度の低い内容(宇宙人だとか脱走動物だとか)と大差は無く具体性に欠ける。

・ハンター
彼らから得られる最も重要な情報は、ビーストを捕獲しようとしている集団が居ることである。以前より街で派手に遊んでいる‘お騒がせ’グループで、「ハント」と称して渦中の怪物を捕まえネット上に画像(映像)をアップし晒すのが目的という。
グループは「シトラウスピッグメンズ」と名乗る男女二十人程度の集団で、略称で「ピッキーズ」と呼ばれている(元はピッ「ギ」ーズだったが名が知れ渡るうちにより簡易な発音になった)。繁華街のアミューズメント施設に主に屯している。「ピッキーズ」の詳細は後述。

②飲食店従業員/ゴミ収集業者
ゴミ置場が荒らされる事案が立て続けに起きている。飲食店やコンビニエンスストアなどから出た廃棄食材が消えており、関係者は何者か(浮浪者など)の食事目的の犯行と見ている。

・蹄
散乱したビニール袋やダンボールに馬蹄形の泥跡が付いていたことがあった。何かの偶然か、ビーストの噂を模したいたずらのどちらかだろうと目撃者は語る。

③路上生活者
ゴミ置場を荒らす犯人として疑われているが、自分達は「ルール」を守っていると主張する。

・放火
以前、ゴミ置場で焦げた痕跡が見つかった。ゴミが焼けた跡で、大した規模ではなかったので騒ぎにはならなかった。彼らはゴミ置場に放火した犯人を目撃しているが、報復を恐れて表沙汰にしていない。ピッキーズによるいたずらで、今回のゴミ荒らしも(実際に見てはいないが)そいつらによるものだと皆思っている。

④警察/暴力団
「ビースト」に関して街の治安を乱す直接的な騒動が起きている訳ではないので、基本的にノータッチである。よくある子供の怪談話程度の認識。

・お騒がせグループ
ピッキーズは「猪瀬亮二(いのせ・りょうじ)」という元ホストがリーダーだが、今月中旬頃から行方を暗ませている。現在はナンバー2でスラブ系ハーフの「福田フレドリク(ふくだ・)」が仕切っている。猪瀬は借金を作り(最近、株のネット取引で相当な損失を出した情報を掴んでいる)、返済を苦に逃亡したと見ている。

・映像
繁華街の防犯カメラが奇妙な影を捉えている。人通りのない深夜にビルとビルの間の狭い路地裏から「何か」が半身を乗り出し、また戻る。姿形から大型犬の印象を受けるが、位置的に直立しているようにも見える。遠い位置で且つカメラの精度的に非常に不鮮明で、解像度の限界から処理をしてもその正体を特定することは出来ない。1週間前(4月18日)に撮られた。
映像の発見者は、噂話のビーストだと冗談めかしく言うが、本人は信じていない(どこかの店舗の呼び込みの着ぐるみだと思っている)。

⑤高齢者
街を長年見てきた老人達の中には噂に関してある逸話と結びつけて語る者がいる。

・昔話
昔、集落の外れの峡谷に大穴があった。地獄に続いていて、時折そこから亡者が現れ墓を荒らして死体を盗む。亡者には鉤爪と蹄が有り獣にも似た容貌をしていて、それは死体を食うことから畜生となり果てた姿である。この半人半獣の化物こそビーストの正体と話す。

→街の風土記に同様の逸話が記されている。また、穴のあった場所は現在、自殺スポットとなっている。詳細は後述。
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