1.イントロダクション

舞台:
昭和初期、東京。特に問題が無ければ、1928年10月15日からスタートする。

探索者の知人に「矢立幸一郎(やだてこういちろう)」という男がいる。新潟の大地主の一人息子だが、当人は金持ちを鼻にかけない気立ての良い好青年。十年前まで東京の商社に勤めていたが、父親の死去(母親は既に他界)に伴い新潟に帰郷、莫大な財産を相続する。以来、数年間は探索者と手紙での交流があったが、月日と共にそれも途絶え、現在に至る。

その矢立幸一郎が先日、死んだ。

10月12日。場所は四谷の南側の低地、鮫川橋と呼ばれる地区でいわゆる貧民窟である。そこにある長屋で、餓死しているのを滞納家賃の取立てに来た大家が発見した。実際に死亡したのは二週間以上前で、その以前から何も口にしていないことが検死で判明している。
この界隈での餓死者はさほど珍しくは無いが、矢立がある程度の身分の出身であった為、新聞で報ぜられ、その小さな記事を探索者が目にした。


◎長屋
鮫川橋の矢立の死んだ長屋は、ほとんど荒ら家のような状態である。平屋の屋根や壁、窓のところどころが壊れ、半ば吹き曝しである。
矢立の部屋はやたらと簡素で、生活感がまるで無く家主の無気力さが如実に窺える。特にめぼしいものは無い。
矢立は2年前よりここに住み着いた。近所での矢立の評判はあまり良くなく、無愛想で人付き合いも皆無。日雇い人夫をやっていたようだが、ここ最近は全く仕事が無かった。

・女
長屋の住人から次の情報が聞ける。
矢立がひどく酔っ払っていたことがある。その時、自分がある女のせいで今のひどい有様になったとわめき散らした。その女が誰なのか聞こうにも、暴れて手に負えない状態だった。
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by nurunuruhotep | 2008-11-02 20:34 | パンの大神 | Comments(0)