3.バー「エティテス」

繁華街の一角、雑居ビルの地下にあるバー。営業は夜間のみで日中は閉まっている。品の良い内装で、ジャズが流れる落ち着いた雰囲気の店。

店員に例のアイスピックのことを尋ねると、確かに店で同じメーカーの器具を使用していることを告げられる。但し、店で主に使っているのは割氷しやすい三連刃のものだという。

店員に実物を見せると、それが「鵜飼蓮二(うがい・れんじ)」の所有物であることを指摘する。鵜飼はエティテスで働いていたバーテンダーで、半月前(正確には探索開始より16日前)に店を辞めている。星のマークを自分の所有物に付けていた。

◎鵜飼蓮二について

①人物像
30代前半で、8年前より務める。無口であまり話さないが、仕事は丁寧で細かい気配りに長けていた。客のグチを嫌な顔一つ見せず淡々と聞く姿は、常連のみならず同僚からも大きな信頼を得ていた。
その反面、どこか人を寄せ付けない雰囲気があり、従業員とプライベートな付き合いは無かった。彼の日常を知る者は居ない。

②星
鵜飼は自分の所有物に五角形の星型の印を付けていた。同僚が聞いたところ、昔からどこか惹かれる形でサイン代わりの目印にしていると語った。普段、無表情の鵜飼がはにかむように話したので、聞いた同僚は印象的に記憶している。

③辞表
16日前、鵜飼からエティテスのオーナーに辞める旨を伝える電話があった。一方的な話し振りで理由は告げられなかった。翌日、店宛に郵便で辞表が届いた。筆跡は鵜飼のもので、定型文で事由に一身上の都合とだけあった。本人からの電話以降、連絡が付かない。

④女とアイスティー
常連客に「サエコ」という女が居る。クラブのホステスで、一人で来ることもあれば男(日によって違う、おそらく彼女の客)と一緒のこともあった。
男連れの時は強い酒を付き合うことが多いが、彼女のグラスにはアイスティーが注がれていた。彼女自身は酒が苦手らしく、鵜飼が連れにばれないようにうまく配慮していた。サエコは一人の時にそのことをいつも感謝していた。

鵜飼が辞める前日、最後に接客したのがこのサエコであった。

連れは無く一人でカウンター席に着いた。この日はパーティ客で賑わっており、サエコの相手は鵜飼に任せ他の従業員は接客に追われた。その為、二人の詳しいやり取りを把握する者は居ないが、傍目には特に変わった点は見受けられ無かった。時折、小耳に挟んだ感じではサエコが仕事のグチを言い、それを黙って鵜飼が聞く、いつもの様子であった。

なお、店員の印象では二人に特別な男女間の感情はないようで、鵜飼はサエコをバーテンダーとして他の客同様「丁重」に接していた。アイスティーに関しても、他の常連にも似た気配りをすることは度々あった。

⑤経歴
エティテスのオーナーを当たれば鵜飼の経歴がわかる。
鵜飼は元々捨て子で養護施設で育った。親の所在は不明。高校を卒業後、職を転々とした後、8年前に店に雇われた。当時24才。始めは雑用だったが手先が器用で、バーテンダーとしてすぐに頭角を現した。

店で鵜飼の現住所と写真を入手することが出来る。この街にある中規模マンションに暮らす。細面で短く揃えた髪形や服装などからさっぱりした印象を受ける。


◎異変
店で変わったことが無いか尋ねると、四日前(雨月がアイスピックを見つけた前日)に水道業者が来たことを告げる。ビルの各部屋の排水口から悪臭がするということで、管理人が呼んだ。下水道に伸びる排水管にヘドロのようなものが詰まっていたようで、業者の処置後は収まった。
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by nurunuruhotep | 2014-04-29 20:27 | Iced Coffee | Comments(0)